[米下院議長訪台] 衝突防ぐ仕組み構築を
( 8/5 付 )

 ペロシ米下院議長が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談した。正副大統領に次ぐ米国ナンバー3で、現職下院議長の訪台は25年ぶりだ。
 中国本土と台湾は不可分の領土として「一つの中国」を原則に掲げる中国は猛反発し、軍事演習などで対抗する。米国も周辺海域に空母打撃群を派遣した。東シナ海周辺の安全保障環境が緊迫の度合いを増していることを強く憂慮する。
 偶発的な衝突が起きれば日本への影響は避けられない。中国は直ちに危険な行動をやめるべきだ。米中両国は最悪の事態を回避するため、危機時の連絡体制構築を急がなければならない。
 ペロシ氏は蔡氏との会談で「米国は台湾と団結する」と述べ、統一圧力を強める中国をけん制した。
 民主党の重鎮であるペロシ氏はこれまでも中国の人権問題を強く批判してきた。今回の訪問でも「台湾の民主主義を守る米国の決意は揺るぎない」と訴えている。
 バイデン米大統領は訪台に否定的だったが、議会は独立した存在でもあることから、直接止めてはいない。米国内で対中強硬論が高まる中、仮に中止を求めれば「弱腰」と受け止められかねない。11月の中間選挙への悪影響を避けたとも見られている。82歳のペロシ氏にとっては、レガシー(政治的遺産)づくりの面もあるようだ。
 一方、中国における台湾問題は譲歩できない「核心的利益」である。
 習近平国家主席は7月の米中首脳電話会談で、「火遊びは自らを焼く」と警告して訪台の中止を求めていた。
 共産党総書記3期目を目指す第20回党大会を秋に控える習氏にとって、会談直後のペロシ氏訪台は、メンツをつぶされた格好だ。
 国民に強い姿勢を示し、求心力を維持したい中国指導部は、台湾周辺での軍事圧力を強化する。
 中国人民解放軍はペロシ氏の台湾到着直後から軍事演習を順次開始。戦闘機27機が台湾の防空識別圏に進入し、うち22機が台湾海峡の中間線を台湾側に越えて飛行した。4日午後に始まった重要軍事演習行動は、台湾を取り囲む周辺の6カ所の空・海域で展開されている。日本の近隣の海域も含まれており、警戒は怠れない。
 米中電話会談では両首脳が対話を継続して意思疎通を図ることで一致、関係安定化への道を模索していた。両国の経済面の結びつきは強く、互いに全面衝突は避けたいはずだ。外交努力を重ね、信頼醸成に努めてもらいたい。
 ペロシ氏は台湾から韓国を経由して、日本に到着。きょう岸田文雄首相と会談する予定だ。台湾情勢は日本の安全保障とも直結する。首相は東アジア地域の安定のためにも、米中間の緊張緩和へ働き掛けを強めるべきだ。