[8・6水害29年] 被災の記憶を忘れずに
( 8/6 付 )

 1993年8月6日、鹿児島市とその周辺が、かつてない豪雨災害に見舞われた。「8・6水害」から、きょうで29年になる。
 同時多発型の土石流や土砂崩れが発生、50人近くが亡くなった。甲突川や新川、稲荷川が氾濫し鉄道、道路は寸断され都市機能はまひ状態に陥った。
 若い世代には現実感がないかもしれないが、ここ数日の東北、北陸の記録的大雨のニュースと同じような光景が身近にあったと想像してほしい。被災の記憶を忘れずに、命を守る備えは万全か、確かめておきたい。
 93年7月9日、鹿児島地方気象台は梅雨明けを宣言した。だが梅雨前線が再び南下。7月の降水量は平年の3.3倍に上り、8月6日の前後にも県内各地で災害が相次いだ。
 姶良・国分地区と、旧吉田町では「8.1豪雨」で計23人の死者が出た。戦後最大級とされた台風13号では、南薩の旧2町で計33人の犠牲者を出した。この夏の豪雨と台風による県内の死者・行方不明者は121人を数えた。
 近年も17年の九州北部、18年の西日本、20年の熊本-と各地で豪雨災害が続く。「100年に1度」の雨が、いつまた鹿児島を襲っても不思議ではないと肝に銘じなければならない。
 どんな備えが必要か。鹿児島市が昨年作った防災ガイドマップが参考になる。
 「いのち」の一文字ずつから始まる三つだ。「いますぐに自宅の安全確認を」「のどかな日に災害時の備えを」「ちゅうちょなく迫る危険に即避難を」と呼びかける。
 自宅が災害危険区域かどうかはハザードマップなどでチェックし避難所への安全ルートを頭に入れたい。非常持ち出し袋は定期的に点検し新型コロナ下、マスクや体温計の用意も必要だ。
 短時間に集中して降るのが近年の豪雨の特徴だ。気象庁による5段階の大雨・洪水警戒レベルに合わせて自治体が出す避難指示を待っていては、間に合わないケースもある。迫る危険を察知し、早めの行動を心掛けたい。
 気象庁の防災気象情報を小まめに見ておくことも大事だ。同庁のサイトでは雨雲の動きが分かる「ナウキャスト」や、土砂災害や洪水の危険度が高まっている地域を地図上で色分けして示す「キキクル」を公開している。
 局地的な豪雨をもたらす「線状降水帯」の半日前予報も6月始まった。精度に課題はあるが避難の目安になる。
 鹿児島市や霧島市など県内の複数の自治体は、スマートフォンで地図を見ながら避難所の混雑状況などを確認できるアプリも導入している。
 さまざまな情報に注意し、命を守る行動に活用したい。近くに“情報弱者”や高齢者がいたら、声を掛け、早めの避難を促したい。