[東京五輪汚職] 商業化の見直しが急務
( 8/19 付 )

 東京五輪・パラリンピックのスポンサー選定などを巡り、紳士服大手AOKIホールディングス(HD)側から計5100万円を受け取ったとして、東京地検特捜部は受託収賄容疑で大会組織委員会の元理事、高橋治之容疑者を逮捕した。
 スポーツの祭典の閉幕から1年。スポンサー企業と組織委を巡る汚職事件に発展したのは残念だ。
 広告大手・電通の元専務である高橋容疑者が理事になった経緯や、組織委での役割について捜査で明らかにしてもらいたい。商業化によるゆがみが指摘されてきた五輪運営の見直しも急務である。
 組織委の理事は高い公共性が求められる「みなし公務員」だ。職務に関連して具体的な依頼を受け、賄賂を受領すれば受託収賄罪が成立する。
 高橋容疑者は贈賄容疑で逮捕されたAOKIHD前会長ら3人から、スポンサー契約やライセンス商品の製造・販売契約の締結などで有利な取り計らいを受けたいとの請託を受け、自身のコンサルタント会社を通じて金銭を受け取った疑いが持たれている。
 スポーツビジネスの第一人者とされる高橋容疑者が理事に就いたのは2014年6月で、当時35人いた理事の最後の一人だった。
 これに先立ち、組織委は専任代理店を電通に決め、スポンサー募集を一任した。組織委には電通から多くの社員が出向し、スポンサー契約や大会運営などさまざまな分野で関わった。
 史上最大規模となる約3700億円もの国内スポンサー収入を確保した背景には、数多くの上場企業と関係を持つ電通の集金力があった。組織委が電通の力に頼った側面は否めない。
 組織委理事の役割は規約で細かく定められていない。スポンサー選定の経緯も不透明だ。高橋容疑者がどんな影響を及ぼしたのか。受領した資金の流れを含め今後の解明が待たれる。
 一方、国際オリンピック委員会(IOC)は、放映権料やスポンサー料に頼って大会を運営している。東京五輪の開催経費は総額1兆4000億円余りを要した。五輪の商業化、巨大化も事件の背景にあったと言える。
 東京五輪は「復興五輪」として、東日本大震災の被災地を世界の人たちに見てもらう狙いもあった。コロナ禍でその意義は失われ、逆に汚点を残すことになれば、選手たちの活躍にも水を差すことになりかねない。
 札幌市は30年冬季五輪の招致を目指しているが、影響は避けられないだろう。
 五輪の原点に返り、行き過ぎた商業化を改革すべきだ。数々の不祥事が起きた東京大会の反省を踏まえ、新時代の五輪像を示せなければ国民の理解は得られまい。