[予算概算要求] 全体像を明確に示して
( 9/2 付 )

 国の2023年度予算に対する各省庁からの概算要求が締め切られた。合計は一般会計で110兆円余り。過去最大だった22年度に次ぐ規模である。
 特徴は、物価高対策や防衛などで金額を示さない「事項要求」が目立つことだ。今後の予算編成過程で金額が示されるため、要求総額はさらに膨らみ、22年度を超える可能性がある。
 事項要求の金額が国民に開示されないまま財務省との折衝が進む懸念も拭えない。政府は編成過程や国会審議などを通し、金額や積算の根拠を明確に示すべきだ。
 防衛省は過去最大の5兆5947億円を計上した。このほかに、長射程のミサイルなど少なくとも100程度の事業を事項要求として列挙。6兆円台半ばの当初予算額を視野に入れる。
 年末までに改定する外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」には「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有が盛り込まれる方針だ。概算要求はそれを先取りして長射程ミサイルの整備を大幅に加速したといえよう。
 ロシアによるウクライナ侵攻や台湾を巡る米中関係の緊張などを受け、防衛力の強化に関心が高まっているのは確かだ。国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に増額を求めた自民党提言も後押ししている。
 金額の目標ありきではなく、どんな外交・安保戦略を描き、防衛態勢を構築するのかを示す必要があろう。国会で真正面から議論してもらいたい。
 事項要求は来年4月に発足する「こども家庭庁」や脱炭素、経済安全保障など幅広い分野に及ぶ。
 契機になったのは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。21年度予算の要求はコロナ関連に上限を設けず、22年度予算では事項要求を認めた。
 6月に閣議決定した経済財政運営指針「骨太方針」には防衛力強化や子ども関連政策の充実が盛り込まれた。
 7月に死去した安倍晋三元首相ら自民党内の積極財政派の意向を踏まえ、予算編成が「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」とも明記。財務省は広く事項要求を認めざるを得なくなったようだ。
 だが、本来の事項要求は政策実行にかかる経費を見通しにくい事業が対象で、例外的であるべきだ。際限なく膨らむことで、予算の全体像が見えにくくなったと言わざるを得ない。
 一方で、骨太方針から、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成目標にしてきた「25年度」の表現が消えたように、財政規律の意識が希薄になっていることを危惧する。
 国の借金「長期債務残高」は1000兆円を超えた。予算の財源をどう確保し、財務体質をいかに改善するか。財政健全化への取り組みは待ったなしであることを忘れてはならない。