[待機児童減少] 保育の質向上の転機に
( 9/6 付 )

 希望しても認可保育所などに入れない待機児童が全国で2944人となり、調査開始以来、最少を更新した。減少は5年連続で近年のピークだった2017年の9分の1に縮まった。
 保育所整備対策で定員が増える中、少子化が急速に進んでいることが主な要因だ。認可保育所などを利用する児童数は、初めて前年を割り込んだ。
 国の「待機児童ゼロ」政策の潮目が変わりつつある。これまで対策が手薄だった保育の「質」も向上させていく転機としたい。
 厚生労働省の発表によると、4月時点の待機児童が前年を上回った自治体は98に上った。その一つ鹿児島市は54人増えて136人となり、全国最多だった。人口が集まる谷山地区での需要に対応できなかったという。
 一方で、全市区町村の約85.5%を占める1489自治体では、待機児童が解消された。保育施設の定員数が昨年度の1年間で3万人余り広がり、受け皿が整ったことが一因だ。
 だが施設の急増は現場の人手不足をもたらし、事故にもつながっている。内閣府によると、全国の保育所や幼稚園で昨年起きたけがなどの事故は2347件と最多を記録した。現在の集計方法となった15年の4倍近くに上る。
 子どもの安全を守るには、保育士の待遇改善に取り組み、人員を手厚くすることが必要だ。
 20年の保育士の賃金は、月収換算で約30万円と、全産業平均より5万円ほど低かった。今年2月には3%(9000円相当)引き上げを目指す国の補助金が創設されたが、より充実した対策を急いでほしい。
 保育士の「配置基準」引き上げも検討してもらいたい。現在、国が定める基準は4~5歳の子ども30人につき1人だ。欧米に比べ、配置人員が少ないことを問題視する声もある。保育の「量から質へ」の転換過程で、見直しは欠かせないのではないか。
 待機児童ゼロ政策がもたらした保育所の「空き」にも目を向けたい。
 全国主要都市の保育施設で今年4月現在、0~2歳児の定員の空き人数が19年と比べ1.5倍に増えたという調査結果がある。66%の施設で余裕があった。新型コロナウイルスの感染を恐れた預け控えも加わったとみられる。
 政府は、この空き定員を活用し、来年度、保育所に入れる条件を満たしていない専業主婦家庭などの子どもを定期的に預かるモデル事業を検討する。孤立の恐れがある「無園児」対策と位置づける。将来的に統廃合が進む可能性も指摘されるだけに、受け皿の確保のため、有効な利用法が必要だろう。
 目指すべきは、望む人が安心して子どもを産み育てられる社会だ。保育所が働く親だけでなく、誰もが利用できる社会インフラになるよう望みたい。