[園児バス放置] 教訓なぜ生かされない
( 9/8 付 )

 静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通う3歳の女児が、通園バスに取り残されて死亡した。園側はきのうの会見で、園児を降ろす際、車内確認が不十分だったと認めた。
 同様の事件は昨年、福岡県でも起きており、国は安全管理徹底を求める通知を出していた。教訓が生かされなかったのは残念でならない。
 園児が車内に残っていないか確認するという基本動作をなぜ徹底しなかったのか。背景にはどんな問題があるのか。関係機関はあらゆる観点から調査を尽くすべきだ。
 女児は5日午後、バス車内で意識を失っている状態で見つかった。気温の上がった車内で約5時間にわたり置き去りにされたとみられ、死因は熱中症だった。
 園の説明などによると、当日は本来のバス運転手が休暇を取ったため、理事長兼園長が代わりを務めた。派遣職員が同乗し、園児6人が乗っていた。女児の保護者から登園管理システムに欠席と登録されず、クラスにも姿を見せなかったのに、園側は保護者に問い合わせなかった。
 漫然と業務を行ったと言わざるを得ない。県警は業務上過失致死容疑で園の安全管理態勢を調べており、今後の捜査を見守りたい。
 通園バスに園児が置き去りにされる事件は、昨年7月に起きたばかりだった。福岡県中間市の保育園で5歳の男児が熱中症で死亡し、当時の園長らが在宅起訴された。
 政府はその際、自治体などに通園バスの安全管理徹底を要請した。運転手の他に職員が同乗し、乗降時に座席や人数を確認して職員間で共有することを求めた。今回も、政府は同様の内容を改めて全国の自治体に通知した。
 だが、単なる声掛けに終わらないか懸念が残る。送迎は園と保護者との「私的契約」との位置付けで、国の統一的な基準はない。安全管理は事実上、現場任せだ。
 少子化の影響で定員割れの園も出ており、保護者の要請に応えるために送迎範囲を広げる動きもある。国はリスクを認識し、安全対策を主導すべきではないか。
 内閣府によると、教育・保育施設で発生し、国に報告のあった死亡・負傷事故は昨年2347件で、年々増加傾向にある。
 背景には人手不足があるとみられており、労働環境の改善を急がなければならない。保育施設への人員投入を進めるために、国は制度設計なども検討する必要があろう。
 きのうの会見では、女児の不在に気付くいくつもの場面があったのに、全て見落とされていたことが浮かび上がった。まずは基本作業を確認し、安全管理を徹底することが大前提だ。