[国葬閉会中審査] 説得力欠いた首相説明
( 9/9 付 )

 安倍晋三元首相の国葬に関する国会の閉会中審査が、きのう行われた。国葬を巡る初の国会論戦である。
 岸田文雄首相は実施を決めた理由について、安倍氏の功績や海外からの多くの弔意などを挙げた。だが、いずれもこれまでの会見での主張の繰り返しにすぎない。一方で、安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係への言及は避けた。
 国葬に対する国民の疑念は解けなかったのではないか。岸田首相が掲げる「信頼と共感の政治」には程遠いと言わざるを得ない。
 首相が何度も触れたのが、海外から多くの追悼が寄せられたことだ。
 約260の国・地域、機関から1700件以上のメッセージが寄せられ、その多くに日本国民への弔意が示されていたと説明。ハリス米副大統領ら、国葬への出席を予定している各国要人の名前も挙げた。「礼節を持って応えるためにも、国の公式の行事として行うことが適当」と述べたが、海外の状況を強調するだけでは説得力に乏しい。
 内閣府設置法と閣議決定が根拠だと正当性を主張する首相に対して、立憲民主党の泉健太代表は「決定は誤りで強引だ。国会への相談なく決められるのか」などと批判した。
 首相は「行政権の範囲で内閣が決定した」と説明。「政府がその都度総合的に判断するのがあるべき姿」として、関連法制定などは不要との認識を示した。
 だが、これでは政府が恣意(しい)的に国葬の対象を決められることになる。泉氏が、「ではなぜ、これほど国民が反対しているのか」と指摘したのは当然だ。首相は「さまざまな意見や批判は受け止める」と答えるにとどまった。
 国葬に反対する声が根強い背景には、安倍氏ら自民党議員が旧統一教会から選挙支援を受けるなどしていた問題もある。
 泉氏らは、自民党が所属国会議員に関係性を点検するよう求め、関係を断つと表明しながら、安倍氏と旧統一教会との関係について明らかにしないことへの疑問を呈した。
 しかし、首相は安倍氏が亡くなっていることを理由に「実態の把握には限界がある」と後ろ向きの回答に終始した。これでは、自民党が教団とのこれまでの関わりを明確にできるのかについても懸念が残ろう。
 国民の賛否が大きく割れているのは、早々に国葬を実施すると決めながら、ここまで国会審議も野党との話し合いも行わず、政府が独断で進めてきたからに他ならない。
 国葬を行うなら、国民の幅広い理解が必要なのは言うまでもない。明らかにされた16億円超の費用にも、疑問が噴出している。政府は丁寧な説明を続けるべきである。