[英女王死去] 一つの時代を築いた
( 9/10 付 )

 英国のエリザベス女王が8日、96歳で亡くなった。
 トラス新首相を任命する公務をこなした2日後のことだ。「私の人生が長くても短くても、皆さんや王室への奉仕にささげることを誓う」。21歳の誕生日スピーチで示したこの決意通りに退位せず、最期まで尽くした。
 戦後間もない1952年、25歳で即位する。英歴代君主の在位期間で最長となる約70年7カ月にわたり、英国の安定と国民統合の象徴として一つの時代を築いた。カナダやオーストラリアなど英連邦の元首を兼ね、英国教会の最高権威者でもあった。
 ユーモアセンスにもあふれ、「英国の母」として敬愛を集めた。最近でも、新型コロナウイルス流行下の2020年に異例の演説を行い「良い時代が来る」と、国民に結束を促した。
 記録的な物価高騰に直面し、生活支援策が喫緊の課題となる現代の英社会に、大きな喪失感を生むことは間違いない。
 「君臨すれども統治せず」という立憲君主制の原則に従い、政治とは一線を画したが、歴代首相から情勢報告を受けた。
 王室外交を展開し、各国首脳との関係も深かった。死去の報に世界中から悼む声が上がる。
 バイデン米大統領夫妻は「並ぶ者のない威厳を備えた女性指導者」とたたえ、これまで14人の米大統領と面会した女王の功績が「米英同盟を深化させた」との声明を発表した。
 約150年前、英領から自治領になったカナダのトルドー首相は「深い愛情を注いでくれた」と感謝。ロシアのプーチン大統領は「世界が権威を認めた」との弔電を送った。分断深まる世界情勢の中、外交舞台での無比の存在感が改めて惜しまれる。
 日本の皇室とも交流を重ねてきた。両国には第2次大戦で戦火を交えた歴史がある。1998年、在位中の上皇ご夫妻を英国に迎えた際の晩餐会で女王は「痛ましい記憶は、和解への力ともなる」とスピーチした。平和を祈る思いでつながる両国の親善の絆を今後も深めてほしい。
 90年代には長男チャールズ皇太子の離婚やダイアナ元妃の事故死で、王室は廃止論が浮上する危機に見舞われたが、身近な王室を目指した改革を進めた。
 後継にはチャールズ皇太子が新国王として即位した。今後、王室の在り方を巡って論議が起きる可能性もある。英国民が新国王とともに新時代を切り開いていくことを期待する。