[尖閣国有化10年] 沈静化への道筋模索を
( 9/14 付 )

 沖縄本島の西約400キロの東シナ海に位置する尖閣諸島(沖縄県石垣市)が国有化されて10年となった。
 周辺では中国海警局の船による領海侵入が常態化している。尖閣に近い台湾を巡る米中対立も激化、偶発的な衝突への懸念が拭えない。
 緊張の高まりによって、尖閣周辺で漁をしてきた鹿児島県内の漁業者も出漁を見合わせるなど大きな打撃を受けている。日中両政府は対話を重ねて歩み寄り、沈静化への道を探っていくべきである。
 尖閣諸島は明治政府により日本に編入されたが、中国は1970年代から領有権を主張している。2012年4月に当時の石原慎太郎東京都知事が都による購入計画を表明、政府は同年9月、20億5000万円で購入する売買契約を地権者と結び、国有化した。
 国有化を決断した野田佳彦元首相は、石原氏が武力衝突も辞さないと強硬論を唱えたことが「決定に踏み切った最大の要因だった」と振り返る。一方で中国政府は猛反発、各地で抗議デモが起き、日中関係は「国交正常化後で最悪」といわれるまで冷え込んだ。
 中国は「固有の領土」との主張を変えず、昨年は海警に武器使用を認める海警法を施行。尖閣周辺で海警局の船を連日のように航行させている。
 日本漁船が来ると領海に侵入して追尾、日本の巡視船が中国船に立ちふさがって退去を求めるという危険な状況が続く。領海侵入したのは昨年は40日で、今年も8月末時点で25日に上っている。
 両国関係がさらに悪化すれば、領海侵入が大幅に増えるとの見方もある。鹿児島の船団は安全面への懸念や不安定な操業に伴うコスト増から尖閣行きを諦めている。「死活問題だ。早く操業できるようにしてほしい」という切実な訴えにも応える必要がある。
 日中両国は14年に危機管理の枠組み運用の協議を進める方針で一致。18年には防衛当局間の相互通報体制「海空連絡メカニズム」をスタートさせた。その柱であるホットラインの早期運用を実現し、偶発的な軍事衝突を避ける強固な仕組みを築くべきだろう。
 両国間には尖閣、台湾のほか、新疆ウイグル自治区の人権問題、経済安全保障など課題が山積する。中国は日本の軍事力増強にも神経をとがらせる。50年前の日中国交正常化の共同声明で誓った「恒久的な平和友好関係」という原点に立ち返り、次の50年に向けて良好な関係を模索したい。
 そのためには岸田文雄首相と習近平国家主席の対話が欠かせない。昨年10月の岸田政権発足直後の電話会談以来、対話は途絶えたままだ。日中は年内の首脳会談を視野に入れる。早期の開催にこぎつけて信頼を醸成していかなければならない。