[小泉氏訪朝20年] 拉致解決もう待てない
( 9/15 付 )

 日本と北朝鮮が国交正常化を目指すと約束した日朝平壌宣言の署名から、17日で20年になる。
 日本人拉致問題の解決が期待されたが、核開発を進める北朝鮮と米国との対立を背景に日朝関係は冷えこみ、先行きは見通せないままだ。
 日本で待つ家族の高齢化は進み、これ以上待つことはできない。政府は主体性を持って拉致問題の解決へ交渉を急ぐべきである。
 2002年9月17日、当時の小泉純一郎首相が初訪朝し、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記と会談した。金氏は拉致を認めて謝罪し、日朝平壌宣言に署名した。
 宣言は拉致問題を「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」とし、双方は「安全を脅かす行動をとらない」と確認した。日本は植民地支配で多大の損害と苦痛を与えたとして、反省とおわびを明記。対北朝鮮経済協力の規模を正常化交渉で話し合うとした。
 同年10月、拉致被害者のうち5人が日本に戻った。小泉氏は04年5月に再訪朝し、被害者の子どもたち5人も帰国した。
 だが、日置市吹上浜で1978年に拉致された市川修一さん、増元るみ子さんを含む他の被害者の帰国は実現していない。政府は重く受け止め、猛省してほしい。
 家族会代表を務めた飯塚繁雄さんが昨年亡くなり、政府が認定する被害者の親で存命なのは横田めぐみさんの母早紀江さん、有本恵子さんの父明弘さんだけになった。市川修一さんの兄、健一さんは「2人には何とか会わせてあげたい」と訴える。家族の願いは切実だ。
 安否再調査を求める日本に対し、北朝鮮は解決済みだとして応じず相互不信が加速している。岸田文雄首相は安倍・菅政権を引き継ぎ、(拉致問題の進展という)条件を付けずに金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と直接向き合う決意を示すものの反応は聞こえてこない。
 交渉が膠着(こうちゃく)する背景には、小泉氏の初訪朝後に浮上した北朝鮮の核問題がある。北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返し、日米や韓国と対立した。2018、19年には米朝首脳会談が行われたが、その後、トランプ政権下での非核化交渉は決裂した。
 今年6月開かれた日米韓首脳会談で、3国は北朝鮮の核開発を阻止するため安全保障協力を強化することで一致した。一方で、岸田首相は拉致問題の即時解決へ理解と協力を求め、両首脳から支持を得た。
 日朝交渉は北朝鮮の非核化が実現しなければ難しいとの指摘もある。バイデン米大統領は米朝首脳会談に慎重姿勢だが、日朝交渉に米韓両国の協力は不可欠だ。同時に、日本は北朝鮮と独自に関係を築き、水面下の交渉を積み上げなければならない。