[認知症不明者] 地域で見守る輪築こう
( 9/20 付 )

 認知症やその疑いがあり、行方不明になった人が2021年、過去最多の延べ1万7636人に上った。警察庁が統計を取り始めた12年の1.84倍で9年連続の増加となった。うち鹿児島県は152人である。
 認知症の行方不明者は事件や事故に遭う恐れがある。ほとんどの人は警察への届け出から1週間以内に見つかっているが、236人は21年中に行方を突き止められなかった。20年以前の届け出を含め、450人が事故などで亡くなっている。
 重要なのは早期に発見し保護することだ。自治体や警察、関係機関の連携に加え、住民の協力が欠かせない。地域で見守る輪を築きたい。
 行方不明者を発見保護するための体制づくりは県内でも進んでいる。官民が情報を共有し捜索に協力する「SOSネットワーク」だ。県によると、指宿市など23市町村が運用している。
 家族が事前に認知症の人の名前や特徴を自治体に登録。警察や自治体に通報すると、住民や事業者などの協力者にメールやファクスで捜索協力の依頼が届く仕組みである。
 スマートフォンのアプリを利用し、より迅速な情報配信を試みる霧島市などの取り組みもある。運用の効果を上げるには、登録者、協力者をともに増やすことが必要だ。
 LINE(ライン)を使う仕組みを九州の自治体で初めて導入した鹿児島市の場合、8月末時点で登録者45人、協力者1110人。協力者は昨年10月の開始以来の目標を上回っているが、市の公式アカウント登録者数約9万人に比べると大幅に少ない。市民の関心を高めるPRに努めてほしい。
 行方不明になった人は想像以上に遠くへ移動することがある。自治体の枠を超えた広域の連携も不可欠だ。
 衛星利用測位システム(GPS)付きの小型発信器や、衣服や靴に貼るQRコードなどの見守り機能も活用したい。鹿屋市はGPS機器を無料で貸与し、鹿児島市は購入費を助成している。こうした負担軽減策も求められる。
 機能を十分生かすには人的なネットワークとの組み合わせが鍵となる。住民が参加する模擬訓練を行えば、有効性の検証と意識向上を図れるだろう。
 捜索費用が家族にのしかかったり、行方不明者が他人を巻き込む事故を起こしてしまったりするリスクもある。保険各社は対応する商品に力を入れており、家族の安心につながるはずだ。神奈川県大和市など保険料を公費負担する動きも全国で広がっている。県内の自治体も参考にしてもらいたい。
 国内の認知症患者は25年に700万人に上るとされる。誰もが行方不明の当事者や家族になる可能性があることを踏まえ、あらゆる対策を講じて安全で安心に暮らせる社会をつくりたい。