[規制委発足10年] 独立性の維持保てるか
( 9/21 付 )

 東京電力福島第1原発事故を教訓に、国の原子力規制委員会が発足して10年がたった。
 2011年3月の事故当時、原発政策を推進する経済産業省にあった原子力安全・保安院は、政治や業界の意向に左右され、規制を担う機能を果たせていなかったことが批判を浴びた。
 代わる組織として12年9月発足したのが規制委である。人事や予算を独自に執行できる「三条委員会」の形で、環境省の外局に位置づけられた。
 岸田政権が原発復権の動きを強める中、節目を迎えた規制委が今後も独立性、中立性を維持し、安全に特化した判断を保っていけるかどうか注視する必要がある。
 発足当初は、看板の付け替えに過ぎないとの見方もあった。だが原発の新しい規制基準を13年7月に施行。日本特有の地震、津波への備えや、炉心溶融を含む過酷事故対策を大幅に強化し、テロや航空機衝突も想定した。
 事故前に国内で稼働していた54基の原発は、老朽化した小型施設を中心に21基が廃炉になった。新基準に沿って巨額の対策費をかけても採算が合わない、との判断も影響したとみられる。
 これまで新規制基準に合格したのは10原発17基。だが、そのうち7基は地元同意の手続きや安全対策工事に時間がかかり、一度も稼働できていない。
 そのほか現在、建設中も含め7原発10基が稼働に向けて審査中だが、自然災害に対する電力会社の評価が規制委に覆され、審査が長期化する原発も少なくない。政界や経済界には規制委に対する不満の声も上がるが、向ける矛先が違うのではないか。
 例えば審査合格後、再稼働に至っていない7基のうち、東電柏崎刈羽原発(新潟県)では昨年、侵入者を検知する設備の故障などテロ対策不備が相次ぎ発覚した。規制委は事実上の運転禁止命令を出した。再稼働が滞るのは、原発の安全利用に向けた基準を軽んじるような事業者側の問題と言っていい。
 政府はこの7基を来夏以降に再稼働させることを目指す。立地自治体からは「厳格な審査をないがしろにして進めるのは絶対ないように」「スケジュールありきでの議論をするつもりはない」と、けん制が相次ぐ。こうした声を真摯に受け止めるよう求めたい。
 岸田文雄首相は、既存原発の活用だけでなく、次世代型原発の開発と建設、また最長60年とされる原発の運転期間延長の検討も打ち出した。福島事故後の「可能な限り原発依存度を低減する」という政府方針を大転換するには、説明が足りない。
 規制委発足当初から委員として携わった更田豊志委員長は5年の任期が満了し、きょう退任する。発足以来のメンバーはいなくなるが、国民の信頼を損ねない取り組みを続けてほしい。