[部分動員令] ロシアの焦りの表れだ
( 9/23 付 )

 ロシアによるウクライナ侵攻は、いよいよ深刻な局面に入った。
 プーチン大統領は21日、部分的な動員を可能にする大統領令に署名し、即日発効。ウクライナ東部や南部の計4州では、親ロシア派がロシア編入を求める住民投票を実施すると一方的に宣言した。
 戦闘が長期化し、ウクライナ軍が東部や南部で反転攻勢を強めている。プーチン政権は兵力増強や支配の正当化で劣勢を打開する狙いとみられる。強引な方針は焦りの表れでもあろう。
 自国民に戦争を強いる動員令には国内から反発の声が上がる。他国の領土の強制的な編入が許されないのは言うまでもない。即刻中止するべきだ。
 プーチン氏は同日の演説で、祖国防衛や解放された地の人々の安全を保証するため部分的動員が必要、と述べた。対象は軍務経験のある予備役に限定し、約30万人規模だという。
 ロシアは、侵攻を「特別軍事作戦」と呼び、職業軍人だけを前線に投入すると説明してきた。「戦争」状態となり、予備役招集など「国家総動員令」が行われた場合の社会的動揺や政権批判の高まりを避けるためとされる。
 侵攻後の戦闘によるロシア軍の死者を、ロシアは5937人とするが、ウクライナ軍は5万人を超えたと発表した。総動員令は避けたものの部分動員令に踏み切ったのは、てこ入れなしに劣勢を覆すのは不可能と考えたからに違いない。
 ロシア国内では動員令に抗議するデモが広がり、多くの人が当局に拘束された。国外脱出の動きもある。反戦の機運が高まるか、注視したい。
 住民投票は親ロ派住民が決めたという体裁だが、プーチン政権の主導であることは間違いない。さらに懸念されるのが、プーチン氏が4州の住民投票の安全な実施を保証すると宣言した上で、領土防衛のためには核使用の選択肢も排除しない考えを示したことだ。
 ロシアは2020年に公表した軍事ドクトリンで、核使用に踏み切る条件の一つとして「通常兵器を用いたロシアへの侵略によって、国家が存立の危機にひんした場合」と規定する。
 ロシア編入が既成事実化されれば、4州への攻撃はロシアへの攻撃と解釈される恐れがある。プーチン政権が核兵器を使う根拠とするつもりなのでは、との疑念は拭えない。
 米ニューヨークで開催中の国連総会では、ロシアへの批判が相次いだ。
 バイデン米大統領は演説で、予備役動員や「併合に向けた偽の住民投票」の強行を重大な国連憲章違反と強調。岸田文雄首相は英国のトラス首相と会談し、住民投票実施を強く非難した。
 ロシアの暴挙と核兵器による脅しを許してはならない。国際社会は一層結束を強めることが求められる。