[西九州新幹線] 開業の恩恵を広げたい
( 9/25 付 )

 西九州新幹線が武雄温泉(佐賀県武雄市)-長崎で開業した。
 佐賀県の一部区間(新鳥栖-武雄温泉)は着工の見通しが立っていない異例のスタートである。博多-武雄温泉は在来線の特急を使う「リレー方式」で運行する。
 所要時間は乗り換えを含め博多-長崎が最速1時間20分で、従来より30分短縮される。沿線の期待は大きく、温泉など観光資源の磨き上げに力が入る。他の交通機関とも結び付け、開業の恩恵を九州全体に広げる努力が必要だ。
 未着工区間の整備方式がいまだに決まらないのは国の調整が失敗したからと言える。西九州新幹線は当初、在来線と新設する専用線の両方を走行する「スーパー特急」方式とすることで佐賀県、長崎県は一致した。
 国はその後、車輪の幅を変えることでレール幅が異なる在来線と新幹線の両方を走行できるフリーゲージトレイン(FGT)導入を表明し、両県とJR九州も合意した。
 だが、FGTは技術、コスト的に難しいと断念。国と与党は「フル規格での整備」に傾いた。こうした経緯に、佐賀県が「在来線の活用が前提という合意が守られていない」と反発するのも仕方あるまい。
 さらに、佐賀県は新幹線の恩恵が薄いと言われる。佐賀-博多は特急で約40分で、新幹線での短縮効果は小さい。それなのに国の試算では建設費約6200億円のうち約660億円が県の負担となる。ルートが並行する在来線の本数が減る懸念も残る。
 多額の地元負担の割に、新幹線の利点は乏しいと佐賀県が受け止めるのは理解できる。国は今後、佐賀県との調整に丁寧に取り組む必要がある。
 新幹線の整備について国は1973年、九州の鹿児島、長崎両ルートなど計5路線の建設を決めた。
 宮崎などを通る東九州など構想段階の基本計画線も全国に11ある。このうち四国新幹線の建設を目指す地元期成会は今年6月、駅の候補地10カ所を盛り込んだ調査報告を公表するなど、待望論は依然として根強い。
 一方、新幹線の建設には長い期間と膨大な建設費を要する。新鳥栖-武雄温泉はフル規格での整備ならば完成までには10年以上かかるとされる。
 その間、全国で人口減少が進むなど社会情勢は変わる。新幹線や地方路線を含めた鉄道網をどう構築、維持していくのか長期的な視点が欠かせない。
 九州新幹線は全線開業して11年、コロナ禍前の2018年度に関西から鉄道を使って鹿児島県を訪れた人は、開業前の3倍近くに増えた。
 西九州新幹線の開業で、県内の観光地は新たな戦略が求められよう。九州の回遊性が高まるような観光開発へ知恵を絞らなければならない。