[安倍元首相国葬] 政権不信は拭えぬまま
( 9/28 付 )

 参院選の街頭演説中に銃撃され、亡くなった安倍晋三元首相の国葬が行われた。鹿児島県内の自治体でも半旗を掲げるなど多くの人が追悼した。
 一方、法的根拠が曖昧だ、などとして一部の野党は欠席、抗議集会やデモも広がった。政府が説明を尽くさなかったことが背景にある。
 国葬を強行した政府に対する不信感は根強い。岸田文雄首相は、国民を分断する事態を招いた責任を重く受け止めるべきである。
 共同通信社が今月17、18日に実施した世論調査で内閣支持率は40.2%に急落、不支持が上回った。報道各社の世論調査でも同様の傾向だった。
 その要因の一つが国葬を巡る政府の対応だろう。国葬に「反対」「どちらかといえば反対」が6割を超えた。
 首相は銃撃事件の6日後に国葬実施を表明。根拠は内閣府設置法と閣議決定としたが、国会審議を経ずに決めたことに、野党は「内閣の独断だ」と厳しく批判した。
 安倍氏を国葬の対象とした岸田首相の説明にも「納得できない」と答えた人が67.2%に上った。首相は経済再生や戦略的外交の展開といった実績を理由に挙げたが、国葬ではなかった歴代首相との違いは不明確だ。
 安倍氏は首相在任期間が歴代最長だった。とはいえ、森友・加計学園などの疑惑について詳しく説明することはなかった。公的行事の私物化が指摘された「桜を見る会」を巡っては虚偽の答弁を繰り返した。
 集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、安全保障関連法の採決を強行して成立させた。こうした国会軽視の政権運営から国葬実施に疑義が生じたのは当然と言える。
 銃撃事件を発端に注目を集めたのが世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治との関わりだ。自民党の調査で教団側と接点がある議員は安倍派が多くを占め、関係の根深さが浮き彫りになった。
 だが、岸田首相は安倍氏と旧統一教会との関係を調べることに否定的な姿勢を崩さない。首相は「批判を謙虚に受け止め、丁寧に説明する」と連発しながら、国会では質問に正面から答えない場面が目立った。国民の疑念が晴れず、国葬に理解が広がらなかった一因でもあろう。
 政府は「弔意は求めない」としたが、半旗を掲げた自治体は多い。結果的に強制につながらなかったか。警備や接遇費を含め、概算で総額16億6000万円とされた費用についても検証し、詳細を公表する必要がある。
 国民の価値観は多様化している。国葬という形式を改めて問い直すべきではないか。岸田首相は国葬を決断するに至った経緯を明らかにし、議論を深めていかなければならない。