[4州「併合」] 許されぬロシアの暴挙
( 10/2 付 )

 ロシア編入の是非を問う「住民投票」が強行されたウクライナ東部、南部の4州について、ロシアのプーチン大統領が「併合」を宣言した。
 8割超が編入を支持したと主張する住民投票の集計結果を受け、民意が示されたとの体裁を取っている。
 隣国に軍事侵攻し、制圧地域を強引に自国領に組み入れ、核兵器を含む武力で威嚇して抑え込もうとする。こんなやり方が、21世紀の国際社会で通るはずはない。断固として非難する。
 ロシアのウクライナ侵攻開始後初めてとなる住民投票の背景には、プーチン政権側の劣勢と焦りがあった。
 米欧から供与を受けた高性能兵器で反転攻勢するウクライナに、4州の一部を実効支配していた親ロシア派は危機感を強めた。占領地をロシア領にすることで、政治的、軍事的な局面転換を図ろうとしたとみられる。
 住民投票は結果ありきで実施され、武装兵士を伴った係官が個別訪問して事実上強制する事例も報じられた。そもそも多くの市民が戦火を逃れるため居住地を離れていたという。民意の正しい反映とは到底言い難い。
 他国の領土保全に対する武力による威嚇または行使を禁じた国連憲章にも反する。米国や欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)が激しい言葉で批判するのは当然だ。
 2014年、ウクライナ南部クリミア半島の併合時は、ソ連崩壊で失った領土を初めて復活させ、プーチン氏の支持率は急伸した。再現を狙ったようだが、当時の熱気は感じられない。
 今回、4州の住民投票と合わせて踏み切った予備役兵対象の部分動員令への反発もあるだろう。ロシアで動員した兵力を、併合した「新たな領土」に展開させる計画とみられている。若者を中心に国外脱出を試みる動きが各地で強まり、首都モスクワなどで抗議デモも起きている。
 プーチン氏は、戦果の誇示で求心力を高めようとするかのように併合宣言の際の演説で「われわれは自らの土地をあらゆる手段で守る」と、核の使用をちらつかせた。
 戦争の局面が変わったのは明らかだ。ウクライナのゼレンスキー大統領は米国主導の軍事同盟であるNATO加盟の正式申請を表明した。停戦、和平への見通しはほぼ皆無、との見方もある。
 国際社会の結束が改めて迫られる。核大国ロシアを抑止しつつ、窮地には追い込まず、ウクライナ和平と欧州安保の交渉の席に着かせる難題に取り組むことが一層求められている。
 ロシア産天然ガスの不足でエネルギー危機が懸念される冬場が近い。日本政府はエネルギー不足、物価高騰といった国内の諸問題に対処しつつ、ウクライナを支え続けなければならない。