[音楽教室訴訟] 楽しく学べる環境こそ
( 11/8 付 )

 音楽教室からの著作権使用料の徴収を巡る訴訟で、最高裁は生徒の演奏に対しては徴収できないとの初判断を示し、日本音楽著作権協会(JASRAC)側の上告を退けた。
 一方、教師の演奏については徴収を可能とした二審の判断を維持、音楽教室側の上告を受理しなかった。5年に及ぶ法廷闘争が決着したことになる。
 今後は具体的な徴収方法や金額などを協議する。子どもたちが楽しく音楽を学ぶために混乱を回避し、双方が納得できる結論を導き出すべきである。
 著作権法は公衆に聞かせる目的で楽曲を演奏する「演奏権」を作曲者らが占有すると規定している。音楽教室のレッスンでの生徒の演奏にも適用されるかどうかが上告審の争点だった。
 裁判で教室側は、レッスンで教師や生徒が演奏するのは公衆に聞かせる目的ではないと主張。JASRAC側は、教室は事業に楽曲を利用しており、そこでの演奏は聞かせる目的に当たると反論していた。
 判決は「生徒は技術向上が目的で、課題曲の演奏はその手段に過ぎない」とした上で、教室が著作物利用の主体とはいえないと判断した。「子どもの練習まで徴収するのか」という教室側の訴えに沿った内容と言えるだろう。
 JASRAC側は1971年に社交ダンス教室の音楽利用から徴収を開始した。2011年以降、フィットネスクラブや楽器演奏を学べるカルチャーセンター、歌謡教室に使用料の徴収対象を広げ、17年に音楽教室からも徴収する方針を表明した。
 使用料は年間包括契約の場合、教室の受講料収入の2.5%で、対象の約6700施設が支払いに応じれば、徴収額は年間3億5000万~10億円と試算していた。徴収拡大路線に歯止めをかけられ、大きな痛手に違いない。
 教師の演奏では徴収できるとの司法判断も確定し、今後事業者との調整が進むとみられるが課題は多い。著作権の保護期間にある曲が演奏されているのか、教室内で生徒と教師がどの程度の割合で演奏しているのかなどを確認し、徴収額を算定する必要がある。
 さらに、JASRAC側は2.5%の割合について「にわかに変更しなければならないとは考えていない」とし、協議の難航も予想される。
 音楽文化の発展のために著作権の保護が大切なことは論をまたない。ただ、地域の音楽教育を担ってきた音楽教室からの使用料徴収は授業料の値上がりにつながりかねない。現場の教師からは生徒に「お手本」を示すことに制約がかかるかもしれないといった懸念の声も出ている。
 音楽教室とJASRACは、音楽文化の振興を図るという点で一致している。子どもが音楽を学ぶ機会を狭めてしまっては本末転倒である。