[葉梨法相更迭] 法務行政をおとしめた
( 11/12 付 )

 岸田文雄首相は、死刑執行判断を担う自らの責務について、ちゃかすように語っていた葉梨康弘法相を更迭した。葉梨氏から辞表を受け取った。
 法相ポストだけでなく、法務行政をおとしめた発言は言語道断である。更迭は当然と言っていい。
 首相はきのう午前の参院本会議では葉梨氏の更迭を拒否していたが、午後に予定されていた東南アジア歴訪前に一転した。与党内からも苦言が相次ぎ、踏み切らざるを得なくなったとみられる。任命責任は極めて重い。
 葉梨氏は9日夜、所属する自民党岸田派議員の会合で「法相は死刑(執行)のはんこを押す時だけニュースになる地味な役職」などと発言した。
 死刑は人の命を奪う究極の刑罰である。従来、法務省は死刑確定者の「心情の安定」への配慮が必要と説明してきた。今回の“軽口”は、そういった制度の正当性を揺るがしかねない。同省内でも「あまりにも軽率」と深刻に受け止める声が上がる。
 葉梨氏は釈明を巡る態度にも真摯(しんし)な姿勢は見られなかった。
 発言の翌朝に松野博一官房長官から厳重注意を受けたが、発言を撤回しない考えを示した。政権中枢から指示され、参院法務委員会でようやく撤回。職務を軽んじているかのような印象を与えたことについて「本意ではない」と繰り返した。
 また9日の会合では「外務省と法務省は票とお金に縁がない」「法相になってもお金は集まりません。なかなか票も入りません」とも述べた。入閣を金もうけや票集めの手段のように言い放った発言は、国会議員としての適格性も疑わざるを得ない。
 首相が当初更迭を拒否していたのは法相ポストの重さを理解していなかったかのような対応だ。踏み切ったのは、世論の反発が大きく、低迷気味の内閣支持率のさらなる下落を招きかねないと危惧したためではないか。
 岸田内閣では先月下旬、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点が相次ぎ発覚した山際大志郎前経済再生担当相が更迭された。
 政治資金を所管する役所の責任者である寺田稔総務相を巡っては、関係する政治団体の不明朗な資金処理が問題視されている。
 ほかにも借入金や領収書の処理に関する疑惑に関する報道が続く寺田氏に対して、野党から辞任要求が出ているが、首相は今のところ応じる様子はない。「辞任ドミノ」が続くなら政権への打撃は計り知れないだろう。
 懸念はまだ1カ月を残す国会の行方だ。こうした問題がくすぶり続ければ、旧統一教会問題をはじめとする重要審議に支障が出るのは必至だ。首相は寺田氏を続投させるなら、その理由を明らかにしなければならない。