[日韓首脳会談] 関係改善へ対話加速を
( 11/15 付 )

 岸田文雄首相は、訪問先のカンボジアで韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談した。日韓首脳の正式会談は約3年ぶりとなる。
 最大の懸案となっている元徴用工訴訟問題では、早期解決を図る方針で一致。韓国前政権時代に冷え込んだ両国関係の改善を目指し、首脳間でも意思疎通を継続すると確認した。
 北朝鮮の核・ミサイル問題でも両国は連携を強化していく必要がある。今後対話を加速させ、関係修復を急がなければならない。
 元徴用工問題を巡っては2018年、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた。差し押さえられた日本企業の資産売却手続きが確定すれば、両国関係はさらに悪化する。
 日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決済みだと批判し、事態打開の責任は韓国側にあるとの立場を取る。日本企業に実害が生じないよう韓国側の責任ある対応を求めてきた。
 外相や事務レベルでの複数回にわたる協議の中で、韓国側は韓国財団による肩代わり案を説明した。日本は詳細を検討しているとみられる。
 ただ、韓国内には日本企業による賠償や謝罪を求める声が強いため、支持率が低迷する尹政権は国内を納得させられるのか懸念もある。両国は解決へ向け知恵を出し合うべきである。
 5月に就任した尹氏は、日本との関係重視を前面に打ち出してきた。首脳が相互に往来するかつての相互訪問(シャトル外交)の復活を提唱する。関係改善の機運を逃してはならない。
 正式会談が実現した背景の一つに、両国を取り巻く国際情勢があろう。
 北朝鮮の核・ミサイル開発と、中国の軍事力拡大で東アジアの安全保障環境は急速に悪化した。ロシアのウクライナ侵攻も背景に、バイデン米政権は民主主義国の結束を図る。そのためにも日韓の関係修復は不可欠だろう。
 日米韓首脳会談も行われ、北朝鮮の完全な非核化に向けて毅然(きぜん)として対応する方針を確認した。
 北朝鮮が地域の脅威となる行動を強めている中で、3カ国は緊張を高める報復的な行為は控えつつ、安保協力と抑止力を強化しなければならない。
 対中国を念頭に、戦略物資の安定調達など経済安全保障に関する対話機構の発足も決めた。米中首脳会談を前に3カ国の連携を確認したものだ。
 台湾海峡の平和維持も共同声明に明記した。これまでの韓国政権は米中一方に肩入れしない外交政策を取ってきたが、インド太平洋地域での秩序維持へ日米と協力する韓国の意思を明確に打ち出したと言える。
 併せて、北朝鮮による日本人拉致問題の即時解決に向けた決意を確認した。日本政府は米韓の協力を得つつ、日朝協議の進展につなげてもらいたい。