[和牛新時代] 高い技術力でリードを
( 11/18 付 )

 霧島市などで開かれた第12回全国和牛能力共進会(全共)で、鹿児島県代表が種牛の部で最高賞の内閣総理大臣賞を獲得した。「和牛新時代」を掲げた大会での日本一である。
 姿形から産肉や繁殖能力などの改良成果を競う種牛の部は、県勢の独壇場だった。最高賞のほか1~6区のうち四つの区で首席を獲得し、飼養頭数トップを誇る和牛王国の底力を示した。
 ただ、消費者のニーズは多様化し、全国的な知名度も高いとは言いがたい。新時代をリードする産地として、さらなる高みを目指してほしい。
 枝肉を競う肉牛の部では課題を残した。8区(去勢肥育牛)で首席を獲得したものの、1982年の福島大会以来となる最高賞は逃した。
 県勢が出品した枝肉は、1頭から取れる重量、霜降り(サシ)の入り具合ともに全道府県の平均を大きく上回った。鹿児島の和牛肉は量、質ともに最高レベルにあるのは確かだ。
 一方で今大会は、「脂肪の量から質へ」という和牛改良の新たな方向性が打ち出された。肉の風味を増すとされる脂肪中のオレイン酸など一価不飽和脂肪酸(MUFA)の含有率が評価の指標となり、県勢の平均は54.7%で、全体の平均56.4%を下回った。このMUFAが鍵を握った7区(脂肪の質評価群)で県勢は5位に終わった。
 全国的にサシを入れる技術が向上し、市場では最上級の「A5」が半数近くを占めるまでになった。消費者の嗜好しこうの変化もあり、次は「質」を重視する時期に来ている。
 とはいえ、現在もまだ枝肉の取引価格はサシの量が左右する。加えて、MUFA含有量を高める手法は途上とされる。県内の肥育関係者の多くは様子見の段階というのが実情だろう。
 鹿児島の和牛生産が高い技術を持つのは疑いようがないだけに、MUFAをはじめ食味を高めていく視点でも挑戦を続けてほしい。消費者のニーズに応えることになるはずだ。
 もう一つの課題がブランド力の強化である。県産和牛は前回5年前の宮城大会で団体優勝したが、消費者への浸透は十分ではなく、宮崎牛などに知名度で後れを取っている。
 そのため県は本年度、大会直後から販売促進に取り組めるようPR費用を当初予算に計上。塩田康一県知事は大会の1週間後にフランスでトップセールスを展開するなど、素早く動いた。
 JA県経済連は今年3月、和牛を東京食肉市場へ出荷し始めたほか、都内有名百貨店への売り込みを強化した。販路拡大や知名度向上には、大消費地・東京での浸透が欠かせないからだ。
 「日本一」の称号を武器に県産和牛を国内外に売り込む好機である。県や関係団体は一体となり、名実ともに和牛のトップブランドに育ててほしい。