[日中首脳会談] 緊張緩和を探る糸口に
( 11/19 付 )

 日中首脳が約3年ぶりに対面で会談し、「建設的で安定的な関係」を目指すことで一致した。岸田文雄首相と習近平国家主席の対話は昨秋の電話会談以来だ。
 両氏が初めて直接顔を合わせ、協力方針で合意をみた背景には、米中両国の覇権争いや、北朝鮮や台湾を含む東アジア情勢の緊迫化の下、これ以上の対立は望ましくないという共通の思惑があった。
 日中トップ同士が意志疎通を図ることは、地域の安定に欠かせない。今回の会談を、両国の緊張緩和を探る糸口にするとともに、重層的な交流に発展させるべきだ。
 岸田氏は、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海情勢や、中国による弾道ミサイル発射など軍事活動への「深刻な懸念」を伝えた。台湾海峡の平和的解決を促し、香港や新疆ウイグル自治区での人権弾圧を念頭に日本の立場も伝えた。主張すべきを主張した点は評価できる。
 対する習氏は「いかなる者のいかなる口実による内政干渉も受け入れない」と、台湾や人権問題への批判を容認しない姿勢を崩さなかった。
 中国は米国と覇権を争っており、日本についても対米関係の中でどう位置づけるか、という視点で見ている。米国の同盟国日本は「台湾有事」などを警戒し、防衛力の抜本的な強化路線を取る。中国側の自制が必要なのは言うまでもないが、真に求められるのは米中互いの挑発を抑える仲介役なのではないか。日本はナショナリズムをあおるだけでなく、冷静に説得していく粘り強さが必要だ。
 これまでにない頻度で行われる北朝鮮のミサイル発射、ロシアのウクライナ侵攻など安全保障環境は厳しさを増す。会談で日中両首脳が、核兵器を使用してはならない、との認識を共有した点は歓迎したい。国連などを舞台とする中国の関与、協力なしには解決不可能な課題だ。「責任ある大国」として役割を果たすよう、働きかける努力が欠かせない。
 米中のはざまで複雑さを増す日中関係ではあるが、気候変動問題や医療、介護など協力すべき分野も多い。北朝鮮による拉致問題については即時解決を含め、緊密に連携していくと確認した。
 互いに重要な貿易相手国であり、経済関係の維持が危機管理につながるはずだ。経済安全保障の観点から万一に備えたサプライチェーン(供給網)の見直しは政策判断として当然だが、中国を排除するのでなく、国際的なルールの順守を前提に、開かれた経済連携の枠組みに取り込むことも検討すべきだろう。
 共存関係の構築へ岸田外交の真価が試される。