[肥料の高騰] 輸入頼みからの脱却を
( 11/20 付 )

 原料の大半を輸入に頼ってきた化学肥料が高騰している。急激な円安進行だけでなく、主要な産地であるロシアからの供給が滞っていることや、中国による輸出制限も要因だ。
 全国農業協同組合連合会(JA全農)は今月~来年5月に地方組織に販売する製品について前期(6~10月)比最大31%の値上げを発表した。前々期(昨年11月~今年5月)と比べ最大94%上げた前期の価格をさらに上回る。
 生産コストの上昇は小売価格を押し上げ、国民の暮らしにも広く影響する可能性が大きい。食料安全保障の観点に立ち、肥料の国産化に向けた対策を講じることが急務だ。
 政府は化学肥料低減に取り組むことなどを条件に、コスト増加分の7割を補てんする新たな支援金制度を創設。食料安保を、重要な国家的課題と認める姿勢も打ち出し始めた。
 経済安全保障推進法に基づき安定供給を図る「特定重要物資」として指定する方針の11分野に、半導体、蓄電池、天然ガスなどと並んで肥料を盛り込んだのは、その表れだ。年内に閣議決定する。
 「特定の少数国など外部に過度に依存する」など4要件を満たす特定重要物資を指定、保護を狙う。
 主な肥料原料の尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムはほぼ全量を輸入に依存する。現状からの脱却は喫緊の課題だ。特定重要物資への指定後は、備蓄や調達先の多様化に取り組む民間企業が支援を受けられる。
 一方、国産化でにわかに注目を集める未利用資源が下水汚泥だ。農林水産省は先月、汚泥の肥料利用について話し合う初の官民検討会を開いた。
 下水汚泥は窒素やリンの栄養分を豊富に含むものの、多くが焼却され、肥料利用は約1割にとどまる。重金属の含有リスクへの懸念も強かった。農水省は検討会を通じて安全性の周知を図る考えだ。
 鹿児島県内では既に、鹿児島市水道局が下水汚泥を高温発酵させた有機質肥料「サツマソイル」を商品化。鹿児島工業高等専門学校の研究チームは下水汚泥に竹おがくずなどを混ぜた肥料を開発、県の機関とも協力しながら特産の茶の栽培試験に挑む。活用が広がれば循環型社会への貢献度も大きい。
 政府は先月決定した物価高対応の総合経済対策にも、肥料国産化に向けた下水汚泥や堆肥の活用を盛り込んだ。地元の先んじた取り組みに光が当たり、追い風になることを期待したい。
 そもそも世界的な食料需要の増加や燃料高騰によって、ウクライナ侵攻前から肥料の原料相場は上昇していた。にもかかわらず、国や農業団体の切迫感は薄かったのではないか。いまの危機を、肥料の“地産地消”を加速する転換点にしなければならない。