[防衛力強化] 装備と費用の精査必要
( 11/23 付 )

 防衛力強化に関する政府の有識者会議が報告書をまとめ、岸田文雄首相に提出した。
 防衛費増額で不足する財源は「国民全体で負担することを視野に入れなければならない」と事実上の増税を提起。抑止力向上については敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が不可欠だと明記した。
 政府は年末までに防衛力強化の内容や予算規模、財源に結論を出す考えだが、これまでの防衛態勢を抜本的に転換する内容である。国会での議論を深め、負担を強いられる国民の理解を得なければならない。
 報告書は、防衛力強化に継続的に取り組むには「安定した財源の確保」が基本だとの姿勢を示した。「幅広い税目による負担が必要」としたが、具体的な税目には触れなかった。
 2022年度の防衛費は国内総生産(GDP)比約1%のおよそ5兆4000億円。自民党が掲げるGDP比2%を達成するには追加で約5兆円を確保する必要がある。
 その増額分を賄う選択肢の一つとみられるのが法人税の増税だ。政府、与党はたばこ税など幅広く検討し、産業界に理解を求める意向だが、報告書が指摘するように、賃上げなどの企業努力に水を差さない配慮が必要になる。
 そもそも増税を検討する前に、まずは真に必要な装備と予算なのかを精査するべきだろう。
 報告書は日本を取り巻く安全保障環境について、中国や北朝鮮の軍事動向を踏まえ「インド太平洋のパワーバランスが大きく変化した」と言及した。敵基地攻撃能力の整備に向け、今後5年間を念頭に十分な数の長射程ミサイルを装備するよう求めた。
 政府は与党協議を経た上で、外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定に報告書を反映させるが、議論を尽くすべき課題は多い。
 例えば、相手領域内のミサイル発射基地などを破壊する敵基地攻撃能力の保有は、他国に脅威を与えかねず軍拡競争に発展しかねない。近隣諸国に理解されるよう説明が欠かせまい。
 政府は先制攻撃を禁止したり、必要最小限度の措置にとどめたりといった発動要件を検討している。だが、ミサイル発射のタイミングを誤れば、先制攻撃になりかねない。
 有事の際に防衛相が海上保安庁を指揮命令下に置く「統制要領」の策定にも乗り出す。自衛隊と海保の一体化が進めば、海保法25条で軍隊としての行動が禁止されている海保が変容する可能性もある。
 政府はこうした懸念を払拭(ふっしょく)しなければならない。その上で望ましい安保政策はどうあるべきか、国民的な議論を盛り上げていきたい。