[森友改ざん判決] 遠い解明、政府は本腰を
( 11/29 付 )

 森友学園に関する財務省決裁文書の改ざんを苦に自殺した近畿財務局の元職員赤木俊夫さんの妻雅子さんが、佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は請求を棄却した。
 訴訟となっても改ざんの動機など佐川氏本人による説明はなかった。遺族が求める全容解明には程遠い結果となったのは残念である。
 政府は第三者による再調査の実施を否定し続け、国会の議論も低調だ。官僚の組織的公文書改ざんの説明逃れを許すなら、民主主義の根幹が揺らぐ。岸田政権は真相究明へ本腰を入れ、雅子さんの訴えに応えるべきである。
 判決は「公務員個人が職務で他人に損害を加えたときは、国が賠償責任を負う」とする国家賠償法に基づき、佐川氏自身は賠償責任を負わないと判断。遺族に謝罪や説明をする法的義務もないとした。
 また、佐川氏が改ざんの方向性を決定付けたと言及したものの、財務省調査報告書の表現をそのまま引用したに過ぎない。雅子さん側から求められていた佐川氏の証人尋問も認めなかった。司法の限界を露呈したと言えよう。
 雅子さんは2020年、国と佐川氏を提訴し、俊夫さんが改ざんの経緯を記録した「赤木ファイル」の提出を求めた。国は裁判所に促され、21年6月ようやく開示した。
 だが、国は12月に請求を全面的に受け入れる「認諾」の手続きを取り、一方的に裁判を終わらせた。不都合な事実を隠そうとしたとの疑念が残る。
 森友学園への国有地売却では8億円余りの値引きを巡り、安倍晋三元首相の妻昭恵氏と学園側の親交が問題になった。安倍氏が国会で「私や妻が関わっていれば、総理も議員も辞める」と答弁したことをきっかけに、理財局長だった佐川氏が改ざんの方向性を決定付けたと調査報告書は示している。
 赤木ファイルには、理財局が改ざんを指示するメールを何度も送り、俊夫さんが抵抗する様子が記されていた。ただ、佐川氏の動機や指示内容、政権中枢との関わりなど肝心の点は分かっていない。
 調査を身内に任せてきた政府は、判決を受けてなお「既に調査は尽きている」と再調査には否定的である。一方、雅子さんは「裁判所は何のためにあるのか」と話し、控訴する意向だ。
 そもそも雅子さんが提訴したのは、佐川氏に改ざんの経緯を直接ただすためである。ただ、二審でも関係者の尋問実現は容易ではないとみられる。
 岸田政権は安倍政治の数々の負の遺産にどう向き合うかが重い課題となっている。岸田文雄首相自ら主導して調査に乗り出すべきではないか。森友問題もこのまま幕引きにしては政治への信頼は取り戻せまい。