[馬毛島知事容認] 議会で納得いく説明を
( 12/1 付 )

 鹿児島県の塩田康一知事は、西之表市馬毛島への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地整備計画について容認する考えを県議会本会議で表明した。
 知事が計画への賛否を明らかにしたのは初めてである。防衛省はこれまでも地元の頭越しに建設への手続きを進めていた。知事の“お墨付き”を得て一層加速させる可能性がある。
 安全で安心な暮らしは守られるのか不安視する県民は少なくない。知事は県議会でさまざまな課題、疑問について納得のいくよう説明すべきである。
 塩田知事は容認した理由の一つに、基地関連工事の環境影響評価(アセスメント)を巡り「知事意見に沿った対応を取る」とした同省の回答を挙げた。西之表市が防衛省に市有地を売却し、米軍再編交付金を受け取る意向であることも理由とした。
 地元の八板俊輔市長は容認の姿勢を強めながら「市民の安心安全の担保に至っていない部分がある」と賛否を明言していない。市長リコール(解職請求)手続きも始まり、建設反対の声は依然として根強い。
 知事はこれまで「賛否は評価書で判断する」とし、八板市長の表明を踏まえる構えを示していた。知事はなぜこのタイミングで容認を表明したのか。
 防衛省はアセスの最終まとめとなる「評価書」を作成し公告後、早期に着工する方針だ。知事は「工事が進む際の体制を整えるために早い対応が必要」と説明した。しかし、地元の理解が得られるまで着工を待つよう国に要望すべきだったのではないか。国のスケジュールに合わせた印象が拭えない。
 種子島上空の飛行を回避する対策も具体化していない。住民が最も心配している点だろう。事故や騒音が発生した場合の責任については「国に対応を要請する」と述べたが、国任せにしてもいいのか。具体的な対策を詰めておくことが欠かせまい。
 県議会では「総合的に検討した結果、県として理解せざるを得なかった」と述べた。積極的な受け入れではないと言いたかったのだろうが、歯切れの悪さは否めなかった。
 これまでアセスを終えないまま続く工事契約に「その都度くぎを刺している」としていたが、歯止めはかかっていない。安全保障は国の専管事項とはいえ、今後国に対しては強い姿勢で臨んでもらいたい。
 台湾有事が懸念され、安全保障環境が悪化している現状への対応が急がれるのは理解できる。だが、米軍訓練が実施される基地建設によって、どんなリスクが生じ、どう対処するのかについても詳細に説明する必要がある。
 基地建設を容認した以上、知事には県民の暮らしを守る覚悟が改めて求められることを忘れてはならない。