[電力カルテル] 顧客の信頼を裏切った
( 12/7 付 )

 事業者向け電力販売でカルテルを結んだとして、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)で中部電力、中国電力、九州電力の3社側に過去最高となる総額1000億円超の課徴金納付命令を出す処分案を通知した。
 電力小売りが全面自由化されたにもかかわらず、各社は互いのエリアでの顧客獲得を制限していた疑いがある。公取委は再発防止に向けた排除措置命令を出す方針も通知した。
 カルテルが事実だとすれば、電気料金の抑制が期待された小売り自由化の趣旨に反する。顧客の信頼を裏切る行為と言わざるを得ない。
 各社は2018年秋ごろから、オフィスビルや大規模工場向けの「特別高圧電力」、中小ビルや中規模工場向けの「高圧電力」の販売を巡り、他社の区域での営業を控えたとされる。
 電力小売りは事業者向け電力を皮切りに00年から順次自由化を開始、16年には家庭向け電力も対象となり全面自由化された。多様な業種が電力販売に新規参入し、大手電力もエリアを超えた営業が認められた。
 家庭にとっては料金の低減が見込めるだけでなく、太陽光や風力など再生可能エネルギーの割合が大きい会社など自由に選べるようになった。
 だが、新電力を含む競争激化に加え、原油相場は指標の米国産標準油種(WTI)が16年から18年にかけて1.5倍となり、火力発電の燃料費が膨らんだ。このため大手電力は他社エリアでのシェア獲得から採算重視に方針を転換した。カルテルを結んだ背景になったとみられる。
 課徴金の内訳は中部電とグループ会社に計約275億円、中国電が700億円超、九電は約27億円に上る。公取委は今後、処分案に対する各社の意見を聞き、正式な処分を出す。
 ただ、中心となってカルテルを結んだとされる関西電力は処分を免れる見通しだ。関電は自主的に違反行為を申告し、独禁法の課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づき、全額免除が適用される。他社を出し抜いた格好だが、社会的な責任が免じられたわけではないことを忘れてはならない。
 今回のカルテルが企業向け料金だったとはいえ、大手電力が公正な競争を阻害し、料金を高止まりさせていたと批判されるのは必至だろう。今後、各社の経営にも影響が出かねない。
 カルテルに関わった4社のうち中国電は、国の認可が必要な家庭向けの規制料金値上げを既に申請している。また、岸田政権は「原発を最大限活用する」方針を掲げている。
 料金の値上げ、原発の再稼働や運転継続を巡り、顧客や国民の理解が不可欠なのは言うまでもない。4社は一連の経緯について説明する機会を設け、批判の声に応えなければならない。