[臨時国会閉会] 首相は説明が足りない
( 12/11 付 )

 臨時国会が2カ月余りの会期を終え、きのう閉会した。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る被害者救済法は成立にこぎつけたものの、自民党との不明朗な関係は解明されていない。行政への信頼を損ねた言動によって岸田文雄内閣の閣僚3人が相次いで辞任した。
 首相は開会に当たって説明責任を重視する考えを強調していたものの、それを果たしたと言えるのか。疑問を持たざるを得ない。
 今国会は、旧統一教会への対応が焦点の一つだった。教団と深い関わりがあったとされる安倍晋三元首相の国葬への反発がある中、首相は所信表明演説で問題に短く触れただけだった。被害の深刻さに対する首相の認識不足は、被害者救済法の国会提出が12月にずれ込んだことからもうかがえる。
 そもそも与党は、被害者救済法は今国会での成立先送りを野党に提案していた。野党の主張を踏まえて修正し、何とか会期末に成立させたのは、内閣支持率が低迷する中、政権批判をかわすための駆け込みだった感が否めない。
 被害者救済法の成立が、旧統一教会問題の幕引きにはならないことを肝に銘じてもらいたい。首相は、安倍氏のほか教団との接点を認めている細田博之衆院議長、地方議員らを徹底して調べ、説明を尽くすべきである。
 10月に山際大志郎前経済再生担当相、11月に葉梨康弘前法相と寺田稔前総務相が交代したのは異常事態と言わざるを得ない。2022年度第2次補正予算案などの審議が滞る要因にもなった。
 首相は説明責任を果たすよう3氏に「指示」していたにもかかわらず、いずれも責任逃れの発言が目立った。首相自身も「任命責任を重く受け止めている」と型通りの答弁を繰り返した。
 予算案や重要法案の審議日程に影響したことを踏まえるなら、首相は国民が納得できるように謝罪すべきだったはずだ。発信力や指導力に疑問符が付いても仕方あるまい。
 首相本人に関しても、昨年の衆院選に伴う選挙運動費用収支報告書に添付した領収書の不備が明らかになった。支出自体は「適正だ」として、さほど問題視していないようだ。
 だが、自民党総裁であり、行政府の長である首相が誰よりも自らを厳しく律する態度を示すことが求められよう。
 野党にも課題が残った。2次補正は国会の事前決議が不要な予備費を4兆7400億円計上したため、野党はその在り方を追及したものの首相から十分な答弁を引き出せたとは言えない。
 23年度予算案では防衛費の大幅増が確実とみられ、特に野党第1党の立憲民主党に課せられた責任は重い。来年の通常国会では与野党が真正面から議論に向き合うことを期待する。