[クルーズ船再開] コロナへの対応万全に
( 12/13 付 )

 国際クルーズ船の受け入れが3年ぶりに再開される。業界団体によると、来年3月以降、外国の船会社が国内に寄港するクルーズが166回予定され、鹿児島港にも寄港する。
 クルーズ船受け入れは、「ダイヤモンド・プリンセス」の新型コロナウイルスの集団感染で2020年3月以降停止していた。再開は停滞していたインバウンド需要の回復につながる好機である。受け入れ態勢を整えるとともに感染対策に万全を期したい。
 国際クルーズ船は、21年前半から欧米で再開しているが、「ゼロコロナ」政策を続けてきた中国など北東アジアは遅れている。3月以降も欧米からの観光客が中心になるとみられている。
 国土交通省が再開に踏み切ったのは、訪日客をコロナ禍前の水準(19年は3188万人)に回復させる狙いがある。加えて、業界団体が策定した新型コロナ予防指針で環境が整ったと判断した。
 指針では、乗客の95%以上が2回、乗組員は3回以上のワクチン接種を義務づける。また乗客は乗船前3日以内の陰性証明を提示する必要がある。
 船内で感染が疑われる事例が発生したときは、濃厚接触者も含めて検査し、陽性であれば船内で隔離措置を取り検疫所に報告する。ただし、船医が封じ込められると判断すれば、航行を継続できるとも明記された。
 船内隔離を原則とするのは、船外に感染が拡大して寄港地の医療機関に過度の負担をかけないためである。指針に基づいて乗員乗客、受け入れ側ともに安心できる態勢づくりに努めてほしい。
 国際クルーズ船の寄港は大きな経済効果が期待できるだけに、どう迎えるかが課題だ。
 観光スタイルは、団体での食事や大型施設での買い物に限らず、訪問先ならではの体験が重視されるという。キーワードは「本物」「特別感」。鹿児島は、この点でポテンシャルが高い。
 砂蒸し温泉や知覧の武家屋敷群といった定番の観光施設をはじめ、焼酎蔵や製茶場見学など、地域特有の食や文化に触れられる場所は多い。桜島のほかに奄美大島・徳之島と屋久島という二つの世界自然遺産も擁する。これらの観光素材は、欧米の富裕層の知的欲求や好奇心を満足させるに違いない。
 今年4月には、鹿児島市のマリンポートかごしまに長さ410メートルの新岸壁が完成し、世界最大規模の22万トン級と16万トン級の船が同時に接岸できるようになった。円安も外国人観光客の誘致には追い風である。
 これまでもマリンポートかごしまでボランティアが小旗を振って、観光客を出迎えるなど、おもてなしに工夫を凝らしてきた。鹿児島の魅力を十分に伝えられるよう知恵を絞りたい。