[インボイス制度] 税負担の大転換周知を
( 12/14 付 )

 事業者の消費税納付の在り方を大きく変える「インボイス(適格請求書)」の2023年10月導入まで1年を切った。インボイスは、売り手が買い手に税率や税額を商品ごとに伝える明細書のことで「税額票」とも呼ばれる。
 19年10月、消費増税に合わせて軽減税率制度が導入され、複雑になる経理事務の下、正確に納税額を計算するために政府が採用を決めた。ただ本格的な事務対応には時間がかかるとして、増税から4年後のスタートとなった。
 零細事業者には新たな制度への不安も根強い。政府は事業者が不利益を被らないよう周知を急ぎたい。
 消費税を実質的に支払うのは物品・サービスを購入する消費者だが、国に納めるのは事業者だ。売り上げに含まれる消費税から、仕入れにかかった消費税を差し引いて納付を低く抑える控除の仕組みがあり、新制度導入後もこれは変わらない。
 だが、導入後6年間の経過措置を過ぎるとインボイスがなければ控除ができなくなる。発行するには原則、来年3月末までの税務署登録の手続きが要る。任意とはいえ、順調に登録が進んでいるとは言い難い。
 鹿児島税務署によると、11月末現在、県内課税事業者の登録は法人、個人事業主合わせて50%。全国の傾向もほぼ同様という。政府はこれまでの取り組みを検証し、円滑な移行に何が必要かを改めて探ってほしい。
 インボイスを巡っては、年間売上高が1000万円以下で、消費税を納める義務のない免税事業者の扱いも一つの焦点だ。
 免税事業者はインボイスを発行できない。このため、仕入れ税額控除をしたい大企業側は取引を敬遠する可能性が指摘されている。一方、免税事業者が大企業からの求めに応じ課税事業者になれば、納税のため売り上げが目減りしかねない。そんな懸念が広がる。
 例えば鹿児島県内各地の物産館への出荷者の多くが免税事業者だ。施設側は控除を受けられなければ数百万円の税負担増を見込むところもある。かといって出荷者に課税事業者への移行をお願いすれば「出荷をやめる人が出るかも」と心配する。行政、農商工団体も一緒に対策を練る必要があるだろう。
 一方、政府は、免税事業者が納税者に切り替われば、消費税を取りながら手元に残していた「益税」問題が解消されると見込む。課税の公平性を保つためにも必要と財務省は説明する。
 政府、与党は中小事業者が課税事業者に転換した場合の激変緩和措置を検討する。来年10月から3年間は、納税額を客から受け取った消費税の2割に軽減する方針で、来年度の与党税制改正大綱に盛り込む。負担軽減策も含め、制度の趣旨を浸透させていかなければならない。