[防衛力強化-3文書決定] 安保政策の大転換だ
( 12/17 付 )

 政府は外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など、新たな安保関連3文書をきのう閣議決定した。
 反撃能力(敵基地攻撃能力)保有や長射程ミサイル増強のほか、防衛装備品の輸出拡大へ制度見直しの検討も記述。防衛力強化とそれを補完する取り組みの予算水準として、2027年度に国内総生産(GDP)比2%を目指すことを明確化した。
 憲法9条の下、戦後堅持してきた「専守防衛」の変容を懸念する。日本の安全保障政策の大転換にもかかわらず、国民不在で進められた感は否めない。真に必要な内容なのか、国会で慎重に議論するべきだ。
 安保3文書は国家安全保障戦略のほか、防衛目標達成に向けた手段を包括的に示す「国家防衛戦略」と、主要装備品や経費を記した「防衛力整備計画」だ。北朝鮮のミサイル技術向上や中国の軍備増強などが改定の背景にあり、3文書同時に行うのは初めてである。
 ロシアによるウクライナ侵攻も含め、安保環境に対する国民の不安は高まっており、防衛の在り方を論じる必要性は理解する。だが、危機感に乗じて増強が図られるとすれば問題だ。
 反撃能力については日本への武力攻撃の発生時に「武力行使の3要件に基づき、ミサイル攻撃を防ぐためにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置を相手の領域で取る」などと定義した。
 3文書は反撃能力の行使に当たり、日米が協力して対処する方針を盛り込んだ。基本原則で「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならない」としているものの、従来の日米同盟の中で「盾」を担ってきた日本が、米国の「矛」の役割の一部を取り込むことになると言わざるを得ない。
 国際法違反の「先制攻撃」になることはないのか、必要最小限度とはどの程度の能力なのかなど、明らかにするべき課題は山積する。
 武器輸出についても、「防衛装備移転三原則」や運用指針の見直し検討など、推進にかじが切られそうだ。
 侵略を受けている国へ、殺傷能力がある武器の提供が想定されているが、第三国への輸出は国際紛争を助長しかねない。
 国の防衛は外交や国際協力と一体的に考え、構築する必要がある。岸田文雄首相の丁寧な説明を求める。