[学術会議見直し] 独立性維持できるのか
( 12/21 付 )

 政府は日本学術会議の組織形態見直しを巡り、会員選考に産業界など第三者を関与させることなどを盛り込んだ方針を発表した。実質的な任命権限は首相にあることを強調する内容だ。
 学術会議は「国の特別の機関」と位置付けられ、中立的な立場で政府に政策提言などを行う組織である。現在、会員は会議の推薦に基づき首相が任命している。
 第三者が選考に関与する度合いによっては、学術会議側の反発を招く可能性もある。なぜ組織を見直すのか、政府は詳細に説明しなければならない。
 見直し論議は2020年、当時の菅義偉首相が従来のやり方に反し、学術会議が推薦した会員候補のうち6人を任命しなかったことを機に浮上した。
 6人は安全保障関連法や特定秘密保護法などに反対した経緯がある。学術会議側は拒否した理由の説明を求めているが、政府側は応じず事態は進展していない。
 任命拒否問題の発覚後に発足した自民党プロジェクトチームは、政府と協調しないのなら国の機関である必要はないと、国から切り離して国費以外の財源を強化するよう迫った。
 学術会議が7月、軍民両面で使える「デュアルユース」技術の研究を事実上認めたと受け取れる見解を示すと、政権側は評価。組織形態に関しては、学術会議が求める現行を当面維持すると判断した。
 岸田政権は科学技術立国の実現という目標に加え、安全保障研究の強化を示している。科学界に協力を求めるため、全面対立は得策ではないとの思惑が透けて見える。
 また今回の方針では、会員選考への第三者関与や運営に関する外部評価機能の強化を掲げるとともに、任命権が首相にあることを強調する文言も首相官邸の意向で入った。
 政権側の強い意思が露呈したと言える。組織の維持は認めても勝手にはさせないとの表れだろう。
 そもそも政府は任命拒否問題を「改革」議論にすり替えた経緯があり、学術会議に何を求めているのかはっきりしない。第三者は誰が決めるのか、任命拒否は今後もあり得るのか。明確にしなければならない。
 学術会議側からはこれまで、「政権に不都合な意見の封じ込め」「学問の自由の侵害」などの批判が出ている。戦争協力への反省から特に軍事研究には慎重とされてきたが、中立性を損なえば学問と軍事が結びつく危うさも増す。
 独立性を保ちながら現状を分析し、改善策を社会に提言することが重要だ。政府に対する助言機能を強化し、政策を進化させることが役割だろう。政府はそうした見直しに取り組むべきである。