[日銀緩和策修正] 弊害の検証が不可欠だ
( 12/22 付 )

 日銀は金利を極めて低い水準に抑え込む大規模な金融緩和策を修正、事実上の利上げに踏み切った。10年近く続けてきた路線の転換である。
 黒田東彦総裁は「利上げではない」と説明し市場機能の改善が目的と強調した。だが市場は利上げと受け止め、円高が進み、長期金利が急上昇した。
 金利上昇の容認は景気を下押しし、日銀が目指す「賃上げを伴った物価上昇」を妨げる恐れもある。日銀と政府は、こうしたリスクに適切に対応していかなければならない。
 日銀は2013年4月、「デフレからの脱却」を掲げた安倍政権下で大規模な金融緩和策をスタートさせ、異次元緩和を継続してきた。借りやすくなった資金が企業の設備投資や個人消費に回り、賃金と物価が上昇する景気の好循環につなげるのが狙いだった。
 今回、上下0.25%程度としてきた長期金利の変動幅を上下0.5%に拡大した。大規模緩和を維持し続けたことによるひずみの修正に追い込まれたと言えよう。
 10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比で3.6%と約40年ぶりの上昇率になった。それでも黒田氏はエネルギー高が主因で賃金上昇を伴っていないとして大規模緩和を見直さない考えを固持してきた。
 だが、利上げに踏み切った欧米との金利差が広がり円安が急速に進行。政府・日銀は円買いドル売り介入でけん制したが、円安が続いた。食料や燃料など輸入品価格を押し上げ、家計を一層圧迫する結果を招いた。金融緩和路線転換の機を逸したのは否めない。
 利上げが今後の経済にどう影響するのか注視しなければならない。円高ドル安に是正されれば、輸入品が安くなり、原材料の仕入れを輸入に頼っている企業にとってはプラスになる。
 一方、長期金利に連動する住宅ローンの固定金利は上がる可能性がある。また、企業が銀行などから資金を借りる際の金利にも上昇圧力がかかる。住宅建設や設備投資などが抑制されれば、景気の失速が懸念される。
 日銀は長期金利が上限を超えないよう国債を大量に買い入れてきた。そのため、9月末時点で政府の借金である国債の半分を保有する異例の事態になっている。
 政府は超低金利で借金しやすくなり財政規律が緩んだ。国債残高は1000兆円を超える。今後、金利の上昇で国債の利払い費が増加すれば、財政が悪化し行政サービスが低下しかねない。
 黒田氏は大規模緩和からの「出口戦略の一歩ではない」としたが、超低金利の長期化は経営が破綻状態にある企業を温存し、日本の産業競争力を弱めたとも指摘される。日銀はこうした弊害を含めて検証し、経済環境にふさわしい政策に見直すべきである。