[薗浦議員辞職] 資金の使途 自ら説明を
( 12/23 付 )

 自民党の薗浦健太郎衆院議員が、パーティー収入を政治資金収支報告書に計約4000万円少なく記載した疑惑を巡り議員辞職した。辞職翌日のきのう、東京地検特捜部は政治資金規正法違反の罪で薗浦元議員を略式起訴した。
 規正法は政治資金の流れを透明化することで、政治への信頼を担保することが目的だ。収支報告書の虚偽はその根幹を揺るがすことになる。
 略式起訴のため書面審理となり、公開法廷で事実が明らかになる可能性はほぼない。薗浦元議員は記載しなかった資金の使途など自ら説明すべきだ。
 起訴状によると、薗浦元議員は会計責任者の元公設第1秘書らと共謀し、資金管理団体の3年分の収支報告書に、パーティー収入を過少に記載したとされる。
 先月は記者団の取材に「過少申告という認識はなかった」と話し、秘書からの事前報告も否定していた。
 だが、東京地検特捜部の調べには一転して過少記載の認識を認めたとされる。略式起訴により正式裁判を回避したとの印象は拭えない。事前に議員を辞職して原則5年間の公民権停止が短縮された例が過去にあり、薗浦元議員もそれを狙ったとみられる。
 これまで本人から過少記載した動機などについて具体的な説明がないのは疑問だ。辞職後も「誤った収支報告書を提出」「私にも一定の責任がある」などのコメントを発表しただけである。誠実さに欠ける対応であり、辞職すれば済む問題ではない。
 薗浦元議員は岸田文雄首相を支える麻生太郎副総裁の最側近だ。安倍政権下で首相補佐官なども務めてきただけに政権への打撃は大きい。
 内閣支持率は夏の参院選後、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題や安倍晋三元首相国葬で下落。10~11月には山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相が相次いで事実上更迭され、岸田政権への逆風が続いている。
 今月17、18両日の共同通信世論調査でも33.1%で、発足以降最低だった11月下旬の前回調査と変わらず、低空飛行から抜け出せていない。
 薗浦元議員は離党したとはいえ、首相には説明させる責任がある。3閣僚が辞任した時と同じように、今回も指導力を発揮できなかったら岸田政権への不信は加速する一方だろう。
 政治資金制度の抜本的な改革が必要との指摘もある。寺田氏の辞任も政治資金を巡る問題が原因だった。秋葉賢也復興相にも同様の疑惑がくすぶる。
 規正法を改正して罰則の適用範囲を広げたり、国民の税金を原資とする政党交付金の仕組みを見直したりする検討が必要ではないか。「政治とカネ」を巡る問題の改革に本腰を入れなければ国民の信頼を失うばかりである。