[新年度予算案] 財政規律の軽視を懸念
( 12/24 付 )

 政府は2023年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は114兆3800億円。11年連続で過去最大を更新し、初めて110兆円の大台に乗った。社会保障費や防衛費に加え、国債による借金の利払い費が増えた。
 歳入の柱となる税収も最多の69兆円を見込むが、巨額の歳出を賄いきれず、35兆円の新規国債で穴埋めする。
 国債残高は既に1000兆円規模に積み上がっている。今後、金利が上がり利払い費がかさむこともある。将来へのつけを前提に予算編成を続けていくのは無責任に過ぎないか。国民にとって真に必要な政策にこそ予算を振り向けるよう、国会で議論を尽くしたい。
 23年度は岸田政権の防衛力を抜本的に強化する5年計画の初年度に当たり、防衛費予算は22年度当初の1.25倍相当の6兆8000億円に膨らんだ。この中には、西之表市馬毛島への米軍機訓練と自衛隊基地整備計画関連の3000億円も含まれる。
 この結果、国債費と地方交付税交付金を除いた国の政策経費で最大の社会保障関係費36兆円に次ぐ2番目となり、公共事業費などを上回った。
 政府は23~27年度の防衛費総額を43兆円とし、上積み総額は17兆円と見積もる。国有資産の売却益や特別会計の剰余金などを集めた「防衛力強化資金」を新設するなどして捻出の体裁を整えたものの、多くが他用途からの「付け替え」だ。結局は借金が膨らむ、との指摘が上がるのは当然だろう。
 安定財源が重要なのは、岸田政権が「倍増」を約束した子ども関連予算も同様だ。今回の予算には、大規模保育所で保育士の配置を手厚くできるように補助金を拡充する措置や、妊産婦に計10万円相当を給付する新事業の経費などを盛り込んだ。
 だが先に増税を含む具体策が浮上した防衛費とは異なり、こちらの倍増は予算の裏付けはない。22年の出生数が初の80万人割れの見通しとなり、想定を超えるペースで少子化が進む中、子ども予算が防衛費増額のしわ寄せを受けることがあってはならない。
 予算ではそのほか脱炭素化社会の実現に向けた取り組みも目立つ。自治体向け交付金に350億円、運送会社やタクシー会社の電気自動車導入を補助する制度に136億円を計上した。
 新型コロナ対策や物価高、ウクライナ危機に伴う景気減速などへの対応に活用できる「臨時」の予備費は22年度当初と同じ5兆円を積んだ。
 だが22年度は第1次、第2次の補正で積み増し、総額で過去最大の11兆7600億円になった。23年度も途中で増額される可能性がある。国会の事前議決が要らず、内閣の裁量で使い道を決められる予備費の巨額計上は財政規律の一層の軽視につながりかねないことを政府は自覚すべきである。