[噴火メール終了] 気象庁は丁寧な説明を
( 12/27 付 )

 気象庁は噴火の特別警報を直接住民に知らせる緊急速報メールの一斉配信をきのうで終えた。その代わりとして、桜島を抱える鹿児島市は急きょ、新たなメール配信の仕組みを整えた。
 住民への第1報を従来とほぼ同じタイミングで伝えられるめどがついた。だが、代替措置が決まらないまま一方的に終了を告げ、火山周辺自治体を困惑させた気象庁のやり方には大きな疑問が残る。メール終了の影響、導入可能な代替措置についてあらためて丁寧に説明すべきだ。
 緊急速報メールは噴火警戒レベルを特別警報に当たる4(高齢者等避難)か5(避難)に引き上げたとき、携帯電話会社を通じ自動配信されていた。気象庁は10月、対象市町村の記載がなく避難情報としては不十分な点や、防災アプリなど他の情報提供環境の充実を理由に年内終了を発表した。
 緊急速報メールがなくなれば、特別警報発表から住民への第1報までにタイムラグが生じる。全国167市町村でつくる火山防災強化市町村ネットワーク(会長・下鶴隆央鹿児島市長)が避難の遅れにつながるとして継続を要望したものの、受け入れられなかった。
 鹿児島市の代替策は、事前登録なしで市内全域の携帯電話に届く既存のシステムを使い、特別警報が発表されると自動配信する。内容はレベル引き上げが中心で、これまで気象庁が配信していたメールと同様、警戒範囲などは含まれない。桜島に近接する垂水市も同様の措置を取った。
 桜島が初めて警戒レベル5に引き上げられた7月、緊急速報メールが配信された。鹿児島市が1時間半後に島内2地区に避難指示を出すまで、どれぐらいの規模の噴火が発生し、どう行動していいのか分からず、島内外に混乱が広がった。
 市は代替メールでレベル上げを知らせた後、警戒範囲や大規模噴火の兆候といった情報は防災無線や交流サイト(SNS)で補い、さらに避難情報はメールで伝達する方針だ。7月の経験を生かして正確かつ迅速な対応を心がけてほしい。
 活動が活発な桜島と静穏な火山の地元では、緊急速報メール終了の受け止め方に温度差もあろう。火山の特徴や生活圏までの距離などさまざまで、代替策を講じない自治体もある。
 気象庁は鹿児島市などの要望を受け、特別警報に大規模噴火の兆候の有無を明記するよう改善した。情報を充実させた点は評価できる。
 ただ、乱立気味の防災気象情報の整理は喫緊の課題である。今回は噴火と同時に大雨などの緊急速報メールも終了した。気象庁は、住民や自治体が正確な情報を入手し、スムーズな避難につなげられるよう分かりやすい情報発信に努めなければならない。