[鹿児島この1年] 米軍との一体化が加速
( 12/31 付 )

 今年は鹿児島県にとって節目の年になったのではないか。その一つが国の安全保障政策が大転換する中、県内でも米軍と自衛隊の一体化が加速したことである。
 西之表市馬毛島への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地整備計画について、塩田康一知事は容認する考えを県議会で示した。鹿屋市では海上自衛隊鹿屋航空基地で一時展開する米空軍無人偵察機MQ9の運用部隊が発足し、県内初の米軍駐留が本格的に始まった。
 基地の「候補地」だった馬毛島は、地元に説明がないまま、日米両政府が「整備地」として正式決定した。整備計画を着々と進める日本政府の姿勢が際立ち、地元はそのスケジュールに合わせざるを得なかった印象が拭えない。
 鹿屋市では米軍絡みの事件事故に対する市民らの不安が募っている中、11月に米兵の乗用車と市内の高校に通う女子生徒のミニバイクが交差点で接触する事故が起き、生徒は軽傷を負った。
 米軍関係者は公務外の行動制限がなく、安全対策は鹿屋だけの問題にとどまらない。県はもっと主体的に取り組んでいかなければならない。
 奄美大島や徳之島などでは、自衛隊と米軍が最大規模の実戦的訓練を行った。海洋進出を強める中国を念頭に、日米の軍事的な一体化を強く印象付けたと言えるだろう。
 新型コロナウイルスの感染は収束の兆しが見えない。流行「第7波」では1日の新規感染者数が5000人近くに上った。
 10月にはコロナ禍で落ち込んだ景気の回復を目指し、政府が国内観光振興事業の「全国旅行支援」を開始、県も独自に離島への旅行支援を拡充した。感染対策への警戒を怠らず、経済の回復にも目配りを続けてもらいたい。
 県が鹿児島市のドルフィンポート跡地に新総合体育館を整備する計画は、状況が混とんとしてきた。
 市は跡地をサッカー等スタジアムの建設候補地の一つに挙げる。景観に富む海辺にあり市街地にも近い屈指の場所だろう。一帯の街づくりをどう考えていくのか。県と市の連携した取り組みが乏しかったのは残念である。
 明るいニュースもあった。霧島市をメイン会場に開かれた第12回全国和牛能力共進会(全共)で、県代表が種牛の部で最高賞の内閣総理大臣賞を獲得、和牛王国の底力を示した。
 春の選抜高校野球大会に奄美市の大島高校が出場した。同校では初めての一般選考枠で、他の離島勢や地方の生徒らの励みになった。
 鹿児島市出身で京セラ名誉会長の稲盛和夫さんが亡くなった。経営者としての功績に加え故郷への熱い思いが印象深い。その教えは多くの県民に受け継がれるに違いない。