[技能実習制度] 抜本的な改革急ぎたい
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 外国人の技能実習・特定技能制度の見直しに向けた政府有識者会議の議論が始まった。今春中間報告をまとめ、秋にも方向性が決まる見通しだ。
 技能実習生は昨年6月時点で約32万7000人が滞在。外国人労働者の2割を占める。労働の担い手として欠かせない存在となる一方で、暴行や賃金未払いなどの人権侵害は後を絶たない。
 昨年12月の初会合では主な論点として、実習制度の存続・再編の可否や、実習生受け入れを仲介する監理団体などの存廃が挙げられた。政府が目指す「外国人との共生社会」実現へ、抜本的な改革を急がなければならない。
 技能実習制度は1993年、発展途上国への技術移転や人材育成を目的にスタートした。しかし、就労先の企業で「安価な労働力」として扱われる実習生は少なくない。長時間労働やハラスメントなどの問題も山積する。
 多くの実習生が送り出し機関やブローカーに高額な仲介料を払い、多額の借金を背負って来日しているという現実もある。出入国在留管理庁の調査では実習生が来日前に徴収された金額は平均約54万円。このため、不当な扱いにも泣き寝入りしたり、耐えきれずに失踪したりするケースが相次ぐ。
 2017年に実習生の保護や受け入れ先の監督を強化した技能実習適正化法が施行された。法に基づき、許可や認定取り消しの処分を受けた監理団体は30以上、実習先は350を超える。一定の効果は認められるものの、依然として暴力や人権侵害が続く状況は見過ごせない。
 低賃金や劣悪な労働環境を改善するため、受け入れ企業の資格を厳格に審査することが必要だろう。悪質なあっせん業者を排除し、来日時の借金の負担が軽くなるような支援の在り方も検討してほしい。
 少子高齢化が進む中、国内産業の労働力不足は深刻化する。19年には人手不足に悩む経済界の強い要請を受けて、即戦力の外国人を受け入れる特定技能制度も新設した。一定の実習経験を積めば技能制度に移れるが、手薄な支援態勢や高額な費用を徴収するブローカーの介在といった問題が残る。
 日本の実習生の境遇に、海外から厳しい目が向けられていることも忘れてはならない。国連の人種差別撤廃委員会は20年、借金返済のために労働を強いる「債務労働」のような状況だとして、制度の見直しと政府の徹底した監督を要望した。
 経済成長が著しいアジアと日本との賃金格差は縮まっている。給料が低く、人権侵害もあるとなれば、外国人にとって日本は魅力ある国とは言えまい。
 働き先として「選ばれる国」になるには社会の一員として迎え入れることが不可欠である。危機感を持って見直しの議論を進めていくべきだ。