[民生委員不足] 大切な役割周知したい
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 地域福祉の世話役として住民と行政をつなぐ民生委員が不足している。高齢化や、働くシニア層の増加、専業主婦の減少が背景とされる。
 世帯数に応じて決まる定数は現在約24万人。昨年12月の全国一斉改選(任期3年)では1万5000人の欠員が生じた。戦後最多とみられる。
 欠員の増加は以前から続いており、このままでは支援の網に漏れが生じる恐れがある。危機を共有し、なり手確保に向けた知恵を絞りたい。
 民生委員は町内会などが住民から候補者を選び、都道府県知事などの推薦で厚生労働相が委嘱する。非常勤の特別職地方公務員と位置づけられる。原則無償だが、交通費など活動費は支給される。
 児童委員も兼ね、仕事内容は多岐にわたる。
 高齢者らの日常全般の相談に始まり、生活保護の受給手続きを助けたり、子育てに悩む親や虐待が疑われる子どもがいれば保健師や学校と協力して支援したりする。「やりがい」を感じている人が多いのもうなずける。
 1人暮らしの高齢者が増えて近所付き合いの希薄化が進む中、孤立・孤独といった課題に向き合う。災害の増加に伴い、近年は「災害弱者」対応への期待も高まっている。
 国は東日本大震災を教訓に、自力避難が難しい人の名簿作成を自治体に義務付け、町内会や自主防災組織、民生委員と共有するよう求めている。避難の誘導や手助けをするためだ。
 だが、プライバシー意識の高まりから、情報提供に同意しない名簿掲載者も一定程度を占める。民生委員の説得も難しく、全国共通の課題だという。
 災害時に支援が届かず、自宅に取り残されるケースは後を絶たない。民生委員の不足は、こうした状況に拍車をかけることにもなりかねない。
 認知度の低さも、なり手不足の要因だろう。全国民生委員児童委員連合会が昨年発表したアンケートによると、民生委員の役割を「知っている」と答えた人は5.4%で、「全く知らない」は36.0%だった。行政はその必要性をもっと周知してほしい。
 担い手の裾野を広げようと、神戸市は大学生に活動を体験してもらう試みを実施した。アピール方法として交流サイト(SNS)や漫画を使うアイデアが出た。
 鹿児島県内にもユニークな取り組みがある。日置市では大人と一緒に活動する「子ども民生委員」が新たに誕生した。高齢者のごみ出しの手伝いなど、できることをしていくという。
 鹿児島県の定数は3163人、鹿児島市は1068人で、昨年改選時にそれぞれ292人、40人の欠員が出ている。地元でも地域ぐるみの支え合いの輪が広がる動きを望みたい。