[コロナ「5類」へ] 国はリスク含め説明を
( 1/22 付 )

 岸田文雄首相は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを今春、季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げると表明した。
 社会活動に関する制限措置の緩和につながるとして、自治体や経済界からは歓迎の声が相次ぐ。一方、対策が緩んで感染者や死者が急増するのでは、との懸念も出ている。
 5類移行が「コロナは終わった」という誤ったメッセージになってはならない。国にはリスクや根拠を含めた丁寧な説明と、感染状況を見極めた上での段階的な移行措置が求められる。
 新型コロナは感染症法上、結核などの2類より幅広い措置が取れる「新型インフルエンザ等感染症」の位置付けだ。国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがあることが要件となっている。
 世界では欧米諸国を中心に新型コロナとの「共生」にかじを切り、対策を緩和する動きが主流となっている。日本政府も既に全国旅行支援を再開し、水際対策も縮小していた。首相の表明はこの延長線上にあるのだろう。
 5類になれば、緊急事態宣言などを定める特別措置法の対象外となる。現在は指定の医療機関に限定されている患者の診療について、受け入れ先が広がるとの期待は大きい。
 だが、医療機関は院内感染への不安を抱える。感染対策の難しさから、受け入れ先が実際に増えるのかどうかは見通せない。
 病床確保のための補助金が打ち切られると、コロナ対応の医療機関が受け入れ数を減らす可能性がある。診療を受けられない人が出てくるようなことがあってはならない。
 現在の流行「第8波」では死者数が急増しており、高齢者や基礎疾患を抱えた高リスクの人々をいかに守るかが課題だ。高齢者施設の感染対策に予算や人員を強化したり、医療体制を再構築したりする必要もあろう。
 5類になると、医療費は原則自己負担となる。現在全額となっている公費負担は段階的に縮小するとみられ、受診控えにつながる心配もある。感染状況に応じて、ワクチンの接種は公費負担を維持するなど柔軟な対応を求めたい。
 海外では対策緩和で感染爆発が起きた例もある。さらに強い感染力を持った新たな変異株が登場した場合はどうするのか、危機への備えも不可欠だ。
 これまでは感染者の外出規制や病床確保など、国や行政機関が要請する形で感染対策をしてきた。5類に移行すれば一人一人の対応がより重みを増すことになる。
 鹿児島県などではインフルエンザの患者数も増えている。発熱などの症状がある人は外出しないなど従来の感染防止の基本を忘れてはならない。