[強制不妊訴訟] 強烈な人権侵害と指弾
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 旧優生保護法下で不妊手術を強いられたとして、熊本県の2人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は、旧法は憲法の幸福追求権などに反すると判断、国に支払いを命じた。
 不法行為から20年で賠償請求権が消滅する民法の「除斥期間」は適用せず賠償を命じた判決は地裁としては初めてだ。被害の甚大性を重視し、救済を優先したと言える。
 長期間適切な対応を取らなかった国を「差別や偏見を正当化、固定化してきた」と非難した。国は原告らが被った身体的、精神的損害と向き合い、救済を急ぐべきである。
 1948年に施行された旧優生保護法は「不良な子孫の出生防止」を掲げ、知的障害などを理由に本人の同意がない場合でも不妊手術を認めた。
 判決は、96年に障害者差別に当たる条文を削除し母体保護法に改称されるまでの間、「生殖機能を奪う極めて強烈な人権侵害を行った」と国の責任の重大さを厳しく指摘した。
 2019年4月、被害者への一律320万円の支給を柱とした一時金支給法がようやく施行された。だが、救済が進んでいるとは言い難い。
 政府の統計では、旧法下で不妊手術を受けた障害者らは約2万5000人いる。だが「被害を周りに知られたくない人もいる」との理由から個別に通知していない影響もあり、支給は昨年12月時点で902人にとどまる。幅広い救済へ知恵を絞らなければならない。
 原告や支援者は今回の判決を評価し、声を上げられない人の後押しになることも期待する。一方で、原告の男性は「健常者と障害者を分ける気持ちが分からない。どこが違うのか」と憤りをあらわにした。
 発言の背景には、旧優生保護法の考え方が今も社会に根強いことを痛切に感じているからに違いない。16年には相模原市の知的障害者施設で、元職員が「意思疎通が取れない障害者は生きている意味がない」と入所者19人を殺害する事件が起きた。
 旧法によって命の選別が半世紀にわたり続いたことが尾を引き、障害者に対する差別や偏見が依然としてなくならない要因の一つではないか。一人一人が自省する必要もあろう。
 先月は北海道のグループホームで、結婚や同棲(どうせい)を希望する知的障害者の男女8組16人が不妊手術や処置を受けていたことが明らかになった。施設側は、処置は当事者の「選択」だったとし、「『子どもが欲しい』と言ったときは、うちでは支援できない」と事前に伝えていたという。
 知的障害があっても安心して結婚や子育てができる環境がなければ、同様の問題が繰り返される恐れがある。国や自治体は支援の仕組みづくりに取り組まなければならない。