[衆院代表質問] 国民の前で堂々議論を
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 岸田文雄首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が衆院で始まり、通常国会での本格論戦がスタートした。
 野党側は、国会閉会中に政府が打ち出した防衛予算の大幅増や次世代型原発への建て替え方針などを批判。首相が「最重要課題」と位置づける少子化対策についても内容や財源をただした。
 一方、首相の答弁はこれまでの繰り返しで、説明責任を果たしているとは言い難い。国会が首相の決断の事後報告の場になってはならない。施政方針で自ら述べた通り、「国民の前で正々堂々の議論」を尽くすべきだ。
 立憲民主党の泉健太代表は、国会での議論を経ない政府の防衛費増額に伴う増税方針を「乱暴な決定」と非難した。施政方針で「増税」の表現を使わなかった点や、東日本大震災の復興特別所得税を転用する手法について指摘し、防衛増税を強行するなら衆院を解散し、国民の信を問うよう求めた。
 解散を巡って首相は「首相の専権事項として適切に判断する」と回答。復興特別所得税については、「税率を下げ、期間を延長する。復興に影響を与えるものではない」と述べ、従来の答弁と変化はなかった。
 昨年12月の共同通信社の世論調査では、防衛力強化のための増税を「支持しない」という回答が64.9%だった。復興財源の一部を転用する形で財源を確保する政府方針には74.5%が反対している。復興への国民の願いを無視したまま増税が強行されていいとは思えない。
 原発の運転期間延長などを盛り込んだ政府の原子力政策の転換について泉氏は、災害や事故、放射性廃棄物処理のリスクがほかのエネルギーに比べて高い点を問題視した。
 首相は放射性廃棄物の最終処分などについて「政府の責任で具体的なアクションを早急に取りまとめ、取り組みを加速する」と答えた。だが、処分先の確保など、問題は山積する。原発活用を主張するなら最終処分場の見通しを示すことが先ではないか。
 少子化対策について立民の大築紅葉氏は「防衛費倍増より子育て予算の倍増が先」と主張し、メニューと財源をセットで示すことを求めた。
 首相は子ども・子育て政策を「最も有効な未来への投資」としながらも、具体的な内容や財源に触れていない。これでは、泉氏が「防衛増税を目立たなくするためのまやかしでは」と疑問を呈するのも仕方あるまい。6月の骨太方針を待つことなく、方針や予算の裏付けを急いでもらいたい。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関係や、新型コロナの感染症法上の取り扱いと今後の国民負担など、明確にすべき課題は多い。27日までの代表質問と、続く予算委員会が実りある議論の場となることを望む。