[1票の格差「合憲」] 抜本改革に着手したい
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 「1票の格差」訴訟で最高裁は、最大格差が2.08倍だった2021年衆院選について「合憲」判断を示した。
 2倍を超えた格差の数値ではなく、最大2倍程度で安定維持できる新たな選挙制度をつくった国会の取り組みに“合格点”を出した。継続的に是正が可能な制度にたどり着いたことは一定の評価に値する。
 だが人口比を反映する新制度の下では、都市部に人口が集中する状況が続く限り、地方の定数が減っていくことは避けられない。国会は「合憲」に安穏とせず、選挙制度の抜本改革へ手を緩めてはならない。
 1票の価値に格差があるのは憲法が定める法の下の平等に反するとして、09年選挙から全国一斉提訴が始まった。2.13~2.43倍の間で推移した09年、12年、14年の衆院選はいずれも「違憲状態」の厳しい司法判断だった。
 是正を迫られた国会は16年、人口比を反映しやすい議席配分方式の一つ「アダムズ方式」採用を決定。17年選挙は経過措置で小選挙区定数を「0増6減」するなどして格差を最大1.98倍にとどめた結果、合憲と認められた。
 だが、同じ区割りで実施された21年選挙は、議員1人当たりの有権者数(投票日)が最少の鳥取1区と最多の東京13区の格差が2.08倍となり、2倍を超えた選挙区は計29に上った。
 にもかかわらず合憲とした今回の判決は「拡大した格差はこの制度の枠組みで是正が予定されている」と判断。「本件選挙の格差は憲法に反する状態に至っていたと言うことはできない」とした。裁判官15人中、14人の圧倒的多数意見だった。
 ただ、一審に当たる高裁段階では「違憲状態」7件、「合憲」9件と割れている。一連の訴訟は節目を迎えたと言えるだろうが、国会は格差縮小に向けた取り組みを着実に実行していく責務がある。
 アダムズ方式で20年国勢調査を反映させた衆院小選挙区定数「10増10減」は、改正公選法として昨年成立、施行された。岸田文雄首相が24年9月の自民党総裁の任期満了前に踏み切る可能性を示唆している次回の衆院解散・総選挙には、適用される見込みだ。
 ただ人口のみの1票の価値判断を続ければ「地域の声が届かなくなる」との指摘は根強い。「格差是正」と「地方の民意反映」を両立させる知恵が問われる。地域の実情を踏まえた区割りの在り方を議論する与野党協議の場を早期に設けてもらいたい。
 そもそも、現在の小選挙区比例代表並立制には「死に票」が多く出ることへの批判が絶えず、投票率の低下を招くとされている。国民の意思を国政へ正確に反映させる観点に立ち、選挙制度の在り方を不断に検証する必要がある。