[細田氏と教団] 議長の資質が問われる
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 細田博之衆院議長が議院運営委員会の与野党代表者に対し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との接点について説明、「やましい付き合いではない」と強調した。
 記者会見など公の席ではなく議長公邸という密室の場である。三権の長としてあまりに不誠実ではないか。公開の場に立ち、堂々と事実関係を明らかにすべきである。
 細田氏は自民党安倍派の前身である細田派会長時代の2016年参院選で、教団側からの組織票の差配をしたとの疑念が持たれている。比例代表で初当選した候補が、派閥を通じて票の支援を受けたと証言した。
 教団側の会合で計8回あいさつし、19年に友好団体が主催した会議では、会の内容をさっそく安倍晋三元首相に報告したい、とスピーチしたことも判明している。
 今回の説明は、各党の議運委理事からの質問に答える形で行われた。細田氏は教団組織票の差配を否定。政策をゆがめられたことがないかと問われ、「議長就任前も後も決してない」と答えた。
 安倍氏に報告したい、とあいさつしたことには「リップサービスだった。安倍氏には報告していない」とした。
 今回の説明で疑問が解消されたとは言い難い。霊感商法について、最近はないと思っていた、という釈明も到底納得できるものではない。
 これまでも細田氏には自ら説明を尽くすという姿勢が見られなかった。
 昨年9月、野党の求めに応じA4判1枚の文書を公表。翌月には同2枚で補充説明したが、教団側会合に出席してあいさつした回数を訂正するなど、ずさんさが目立った。
 今回も議長就任前のことを巡り記者会見するのは適切ではないと主張し、「議長の立場で答えるのはふさわしくない」と公の場での説明を拒んでいる。
 議長ならば都合の悪いことは語らなくていいと考えているのか。むしろ、全衆院議員に範を示し、説明責任を果たさなければならない。
 細田氏は説明で、安倍氏と教団について「大昔から関係が深い」とも明かした。出身の安倍派は党の中でもとりわけ教団側との関係が深いとされている。党総裁である岸田文雄首相には全容を解明する責任がある。
 衆院代表質問でも取り上げられたが、首相は「細田氏が自身の判断で対応すべきだ」と述べるにとどまった。党と教団との関係解明がこれで幕引きとなってはならない。
 野党の追及姿勢も問われる。立憲民主、共産両党は記者会見での追加説明を要求。日本維新の会は立民と国会対応で共闘するが、「一区切り」との認識だ。野党には国会での徹底的な究明へ連携を求めたい。