[国際線再開] 定期便見据えた態勢を
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 新型コロナウイルスの影響で全便運休が続いていた鹿児島空港(霧島市)の国際線が3年ぶりに再開した。
 第1便はゴルフ客ら170人を乗せた大韓航空のチャーター便だった。3月1日までにソウル、釜山の計22往復が予定されている。定期路線便ではないものの、久しぶりに外国人旅行客を迎えられたことで、関係業界は胸をなで下ろしているだろう。
 水際対策の緩和や円安で、全国的に訪日客は回復傾向にある。地場経済振興のためには定期路線が不可欠だ。県や関係団体は早期再開へ働きかけを強め、路線拡大にも取り組んでほしい。
 鹿児島空港の定期国際路線はソウル、上海、香港、台北の四つがある。旅客数は2019年に過去最多の41万人に達した。このため、ターミナルを20年にかけ増改築。1階ロビーや手荷物検査所を拡大し、飲食店などを新設した。搭乗橋なども増やし2便同時の発着が可能になっている。
 年間60万人程度の訪日客を受け入れる能力が備わったが、コロナ禍で20年3月から定期路線は運休。同年7月に予定されていたベトナム・ハノイとの直行便就航も延期された。これまで新ターミナルを利用する機会がなかったのは残念である。
 昨年6月以降、水際対策が段階的に緩和され、政府観光局の推計では、22年の訪日客数は約383万人で、21年の15.6倍になった。コロナ前の19年と比較すると12%にとどまるが、今年は回復に拍車がかかると見込まれる。
 国別では韓国101万人、台湾33万人、米国32万人と続いた。19年に959万人で3割を占めた中国は19万人だったが、「ゼロコロナ」政策は終了しており、日本への団体旅行が解禁されれば訪日客は一気に増えよう。鹿児島を含め定期路線の復活も期待される。
 懸念材料は人手不足である。鹿児島空港では国際線運休中に、荷物の積み下ろしなど地上業務の担当者が減っている。定期路線が再開しても対応できるか不透明だ。
 コロナ下で人員整理を進めた観光施設も多く、民間調査では昨年10月時点で、九州・沖縄に本社を置く企業の52%が正社員不足を訴えた。中でも前年と比べ旅館・ホテルが66ポイント、飲食店は37ポイント上昇した。関係者は訪日客がコロナ前の水準に戻ることを想定して人材確保や育成を急がなければならない。
 塩田康一知事は1月末、台湾を訪問し現地航空会社に台北線の再開を要請した。他県に後れを取ると、せっかくのインバウンド需要を失いかねない。他の路線再開にも機を逃さず取り組んでほしい。
 そのためには国際線利用の2割にとどまる出国客も増やす必要がある。官民で力を合わせ路線の周知と魅力的なツアー商品開発に努めてもらいたい。