[教員の精神疾患] 職場環境の抜本改善を
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 2021年度に「心の病」で休職した公立学校教員が過去最多だったことが文部科学省の調査で分かった。
 働き方改革が思うように進まない学校現場に、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけたとみられる。
 人手不足が続く中、休職者が増えれば補充が追いつかなくなり、教員1人当たりの負担はさらに重くなる。職場環境の悪化は教育の質低下につながりかねない。国と自治体は抜本的な対策を急がなければならない。
 全国の公立小中高校と特別支援学校で21年度、精神疾患で休職した教員は前年度より694人多い5897人に上った。全教員に占める割合は0.64%。1カ月以上の病気休暇を含めると1万944人で、初めて1万人を超えた。鹿児島県内の精神疾患による休職者は1人減の89人(0.54%)だった。
 コロナ下の学校現場では、従来の業務に加えて感染防止策やオンライン授業などへの対応が求められた。文科省は、忙しくなって教員間のコミュニケーションが減ったことが影響したとみている。負担ばかり増え、心の健康管理はおろそかにされたといえよう。
 若手ほど休職する割合が高い傾向が出ている。また、どの年代でも赴任から2年未満が目立つ。保護者の過剰要求への対処なども含め、一人で悩ませず、経験豊富な同僚が支える体制を整えるべきだ。
 外部のカウンセラーを派遣するなどして相談しやすい環境をつくったり、早期に心身の不調に気付けるようにしたりする取り組みもある。復職前後のサポート体制と併せ、地域や学校の実情に応じて取り入れたい。
 ただ、こうした対策は対症療法の域を出ない。職場環境を根本的に改善するには、業務を減らす働き方改革と、給与をはじめとした待遇の見直しを両輪で推し進めることが欠かせない。
 近年、公立学校教員の採用倍率は低迷し、人材確保が難しくなっている。県内では、正規教員になりやすくなったことで、病気などで不足する職員をカバーする臨時教員のなり手も減っている。教職の魅力を発信し、希望者を増やす努力が必要だ。
 働き方改革の検討は正確な現状把握が前提となる。文科省が本年度行った6年ぶりの勤務実態調査の結果は春にも公表される。前回調査からの変化、コロナの影響などを精査し、効果的な対策につなげなければならない。
 待遇面では教職員給与特別措置法(給特法)の見直しが鍵となる。時間外手当などを支払わない代わりに月額給与の4%相当を支給すると定めた法律で、「サービス残業の温床」とも指摘される。
 昨年末、有識者会議での検討がようやく始まった。財源まで踏み込んだ論議が求められる。