[新幹線重大事態] 安全の信頼を揺るがす
( 12/19 付 )

 走行中の新幹線の台車に亀裂や油漏れが見つかり、運輸安全委員会が重大インシデントと認定した。新幹線のトラブルでは初めてのことだ。
 過去にもボルトの緩みなどのトラブルはあるが、今回は脱線事故につながる恐れがあったと判断した。
 新幹線の安全性に対する国民の信頼を揺るがす事態である。二度とこうした事態が起きないよう、委員会とJR西日本は原因を徹底的に究明し改善策を打ち出す必要がある。
 トラブルは11日午後1時33分博多発東京行き「のぞみ34号」で発生した。乗務員らが異常に気付き、午後5時ごろに名古屋駅で運転を取りやめた。
 首をかしげたくなるのは、最初に異臭に気付いてから車両の床下を点検するまで約3時間も運転を続けていた点だ。
 この間、車両保守担当の社員はモーターがうなるような音を聞いた。車内では一時、もやも確認されている。にもかかわらず「支障はない」と判断した責任は重大だ。
 名古屋駅に到着した際、車内には約1000人の乗客がいた。もし脱線事故が起きていたら、多くの犠牲者を出す大惨事になっていた可能性がある。
 鉄道事業者は定時運行で利用者の信頼に応えなければならない。だが、安全が何よりも優先するのは当然だ。
 JR社員が車両の異常を察知した段階で、なぜ速やかに停車させ点検しなかったか厳しく問われる。JR西は安全第一の社員教育を徹底すべきだ。
 原因究明については、材質や構造など車両自体に問題がないか調査が必要だ。
 JR西によると、発生当日の11日未明に目視点検を行ったが、異常は確認できなかったという。点検のあり方が適正だったかという検証も欠かせない。
 他のJR各社は今回の事態を踏まえ、情報や危機感を共有してほしい。必要に応じて点検作業などの見直しも求められる。
 新幹線は1964年の開業以来、脱線や故障による死亡事故がなく、安全面で世界最高レベルとされる。日本の技術の粋が集められている。
 政府は高い技術力をアピールして海外への売り込みに懸命で、インドでは今年9月に全長505キロの鉄道建設がスタートしたばかりだ。
 国際的な信用を失わないためにも、安全走行へあらゆる手を尽くさなくてはならない。