[米の安保戦略] 世界平和へ責任は重い
( 12/21 付 )

 トランプ米大統領が国家安全保障戦略を公表した。オバマ前政権の2015年2月以来で、包括的な安保政策はトランプ政権で初めてだ。
 持論である「力による平和」の実現に向け、国際秩序の安定を図る内容だ。圧倒的な軍事力の維持と経済再建を前面に打ち出して、米国の優位を保つ姿勢を明確にした。
 国内の支持層を意識した「米国第一」主義に基づく戦略といえよう。だが、米大統領は超大国の指導者である。世界の平和と繁栄に責任を負うことを肝に銘じてもらいたい。
 新戦略は国際社会の主導権を巡り、各国が激しくせめぎ合う現実を直視したのが特徴だ。他国との協調を重んじ、影響力を軍事力に頼らないとした前政権の路線から大きく方針転換した。
 米国民と米国土の防衛、米国の繁栄推進、力による平和の堅持、米国の影響力拡大-の四つを柱に据えた。国益優先の理念が反映されている。
 一方、中国とロシアを国際秩序の現状変更を試みる「修正主義国家」と指摘して、対抗姿勢を打ち出した。中国に対してはインド太平洋地域で影響力を強めていると危機感を示す。ロシアには世界でサイバー攻撃を仕掛けていると批判した。
 核開発を続けている北朝鮮とイランについては「ならず者政権」と非難。国際テロ組織を含む三つの勢力を米国への「挑戦者」と表現している。
 こうした姿勢は、価値観や見解の差異を縮めることはできても、完全な克服はあり得ないとの認識の表れだろう。
 同盟国に対しては、共通の脅威に軍事力で対処するため「公平な負担」を求めた。
 トランプ氏は11月に来日した際、日本に米国製武器の購入拡大を要求している。今後一層、軍事力の強化を求めてくることが予想されよう。
 トランプ政権はこの戦略に基づき軍事力を増強する構えだ。今後公表する見通しの核戦略の指針「核体制の見直し」や対テロ戦略からも目が離せない。
 核・ミサイル開発を巡り、手詰まり感のある北朝鮮対策の行方も懸念材料だ。
 いずれの国にも武力行使に至るようなことは決してあってはならない。
 新戦略の下、トランプ氏の打ち出す政策が最低限の国際協調路線を踏み外すことがないよう、日本を含む国際社会はしっかり見極め、対応しなくてはならない。