[地上型イージス] 導入の論議が不十分だ
( 12/22 付 )

 北朝鮮の「脅威」を錦の御旗に際限なく防衛費が膨らむ恐れがあると憂慮せざるを得ない。
 政府は、地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入を閣議決定した。2023年度の運用を目指す。
 防衛装備の整備目標を10年程度想定して定めた「防衛計画の大綱」に記載されておらず、今回の閣議決定は異例だ。
 政府は核・ミサイル開発を進展させる北朝鮮に対処するためというが、多額の血税を使うのに国会論議は尽くされておらず、あまりに拙速な決定ではないか。
 配備が計画されている陸上自衛隊の演習場がある秋田、山口両県の住民には「標的になるかもしれない」との不安の声もある。
 野党は導入の必要性や閣議決定の正当性など来年1月の通常国会で追及する構えだ。国会で論議を深めるとともに、政府は国民に丁寧に説明すべきだ。
 防衛省がイージス・アショアを柱とした新規装備品の導入を明確に示したのは8月である。小野寺五典防衛相は防衛範囲や迎撃能力が高まると意義を強調する。しかし、迎撃能力や運用時の費用などについて説明は不十分だ。
 導入の背景には海上自衛隊の疲弊もあるという。日本海沖ではイージス艦が24時間態勢で警戒に当たっており、弾道ミサイルの破壊措置命令は昨年8月以降、発令されたままだ。
 イージス艦だけでなく陸上での迎撃態勢を充実させれば、海上自衛隊の負担を軽減できるということなのだろう。
 だが、気になるのは迎撃能力について防衛省幹部は同時多発に発射された場合「全て迎撃できるかどうかは分からない」と語っていることだ。つまり効果は未知数と言っているようなものである。
 今回、2基を導入する計画だ。1基約1000億円を見積もるが、最新鋭レーダーの搭載などで費用がさらに膨らむ可能性もある。
 巨費投入には、防衛装備品売り込みに熱心なトランプ米政権にアピールする狙いも透ける。
 購入は、対外有償軍事援助(FMS)という契約方式で実施する見通しだ。米国の見積額に基づく前払いが特徴であることを考えれば、相手の「言い値」で買うことになりかねない。
 日本の財政は社会保障費などの増加で厳しさを増す。そうした中、防衛費が十分な審議もなく膨張していくのは尋常ではない。
 重要なのは「専守防衛」の国是を守ることだ。軍拡競争に走るのではなく、粘り強い外交努力で平和を構築することが求められる。