[経済効果試算] 農業現場の不安解消を
( 12/23 付 )

 政府は、米国が抜けた環太平洋連携協定(TPP)と、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効すれば、実質国内総生産(GDP)が合わせて年約13兆円増えるという試算を発表した。
 GDP押し上げは2.5%分に当たり、約75万2000人の雇用も生むという。
 安い海外産品の流入に伴う農林水産物の国内生産減少額は小幅と推計した。農業を巡る想定や経済情勢の予測には甘さが目立ち、実現性には疑問が残る。
 安倍政権が描く「ばら色の未来図」に具体的な根拠はあるのか。都合のいい数字を並べるのではなく日本の農業の現場が抱える不安と向き合い、具体的な対策で応えるべきだ。
 二つの通商協定は、手続きが順調ならともに2019年に発効する。成果に陰りが見える「アベノミクス」のエンジンとしたい政府の思惑が透ける。
 自由貿易の拡大で消費者に恩恵がある一方で、市場開放のしわ寄せも予想される。だが、農林水産物についての政府の試算には問題があると言わざるを得ない。
 国産農林水産物の影響試算ではTPPで13品目、日欧EPAでも畜産物や木材などの価格が下落して13品目で生産額が減る見込みとなった。
 畜産や木材産業などの体質強化や農地・施設の規模拡大を後押しすることで、国内生産減少額は2協定の単純合算で年間最大約2600億円にとどめた。
 政府は15年に策定したTPP関連政策大綱を改定してEPA対策を追加。17年度の補正予算案には農林水産業対策や企業の海外展開支援などに3465億円を盛り込んだ。
 農業への影響の試算は、こうした国内対策の効果が着実に表れることが前提で、いわば絵に描いた餅である。
 国はTPPや日欧EPA交渉が決着する前からさまざまな農業振興策を打ち出してきたが、生産者の高齢化や割高なコストの影響で総産出額は停滞したままだ。
 新たな対策で農家の所得や生産量を維持できる保障はない。
 木材や豚肉など関連の深い農林産物の関税撤廃や削減が決まったことに、鹿児島県内では打撃を懸念する声が強い。 
 鹿児島でも全国でも、後継者不足の産地や山間部の小さな農家は多い。国はこうした生産者をどう支援し、守っていくのか。
 政府は経済協定の内容や影響について丁寧に説明すべきだ。生産者の要望に真摯(しんし)に耳を傾ける姿勢が求められる。