[南京大虐殺80年] 未来志向の歩み進めよ
( 12/24 付 )

 旧日本軍が1937年12月、中国・南京を占領してから80年が経過した。
 中国国民政府の首都だった南京を攻略した日本軍は、中国軍の敗残兵や捕虜、一般市民を多数殺害、暴行したとされる。南京大虐殺として知られる戦争犯罪の象徴的な事件である。
 悲劇の歴史を繰り返さない決意を新たにしたい。
 現地の国家式典で演説した兪正声(ゆせいせい)・人民政治協商会議主席は「軍国主義の歴史を直視」するよう日本をけん制した。一方で、「歴史をかがみとして未来に向かって友好関係を続けなければならない」と主張した。
 習近平国家主席は3年ぶりに出席したが、演説はしなかった。
 中国政府はもともと地方政府の主催だった式典を2014年に国家レベルに格上げした。抗日戦争での共産党の功績を強調して一党独裁体制の正統性を誇示する場としてきた経緯がある。
 ところが今年、未来志向の発言が目立ち、習氏が演説を見送ったのは、対日関係への一定の配慮の表れとみていいだろう。
 今年は日中国交正常化45周年の節目だ。先月は安倍晋三首相が習氏、李克強首相と相次いで会談した。今月、東シナ海での偶発的衝突を回避する「海空連絡メカニズム」の設置案を大筋合意するなど、両国には関係改善の兆しがうかがえる。双方の努力でこうした流れを定着させなければならない。
 南京大虐殺に関しては、日中政府間で犠牲者数に関する見解が異なる。中国側は「30万人以上」と主張し、一切譲歩しない。日本側では「数万~20万人」と諸説あり、外務省は「非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」としている。
 認識の溝はなかなか取り除けない両国関係のとげになっている。
 06年に日中の有識者による共同研究が始まったが、10年に公表された報告書は両論併記だった。その後、尖閣諸島を巡る関係の悪化などで共同研究は停止している。
 中国では党や政府の公式見解に異を唱えるのは難しく、自由な研究や発表が不可能との指摘もある。この状態が続けば、日本で「中国の主張はおおげさだ」といった意見が増幅しかねない。犠牲者数の論争で対立を先鋭化させるような愚を重ねるべきではない。
 最も重要なのは、大虐殺が起きた原因を探り、世界中で二度と同じような事件が起こらないようにすることだ。この研究に日中共同で取り組み、人類が共有できる教訓を得てこそ、真の未来志向の関係構築といえる。